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「…嶋も知っている通り、休み明けには試験があるんだよ。夏休みだってウカウカしてらんない。Ωの僕にとって、試験結果は唯一、プライドを守れる場なんだ。」
未だΩという種の選別は、密かにこの世でちらほら見受けられる。学校とは、人が社会に出る前に、その規則を学ぶ場である。当然、幼い人間達のΩイジメも見受けられる。いじめや偏見に屈しないためにも、紫はペンを握っている。事実、その地位と名誉の恩恵で紫はいじめの目標から外されている。…まあ、代わりに散々裏で陰口を叩かれているわけだが。いじめによって起きる最悪の顛末…自殺に追い込まれるという筋書きは辛うじて回避している。
「だからって、根を詰めて自分諸共滅ぼしちゃ本末転倒でしょ…。」
嶋は、相手の顔を覗き込む。とにかく、と紫は声をあげる。
「…僕は今日、図書館に行くから。」
薬を取ってくる、と紫は席を立った。嶋は、目前の空席を眺め考える。
(…同居してんのに、ナニコレ。半日いないのと一緒じゃん。)
(矛盾している言動といい、行動といい、紫は一体何考えてんだ??)
(日中、まるでオレを避けているみたいに動くし…。)
腕組みして、嶋は考え続ける。
(っつか、『図書館に行ってくる』って証言もオレ、信じていいもんなの??)
(図書館に行くと見せかけて、別の場所に行っているとか…。)
(図書館にはいるけど、漫画読みまくってるとか…。目当ての女子がいたりして…。)
そこで、嶋は顔を上げた。
「目当ての女子…。…彼女がいたら、最高じゃん‼」
(おっし、今日は紫の尾行だ‼)
三分で今日やることが決定するお手軽な嶋だった。
紫が家を出て、数分後。嶋は密かに準備を進める。
(そもそも“3O”を提案する市川みたいなのが同級生なんだぞ、紫ちゃんの。…っつーわけで、紫ちゃんがそっちの道に興味あっても全くおかしくない‼むしろ、あるだろっ‼)
尾行の格好として、嶋は迷彩柄のシャツにベージュのジーパン。肩から双眼鏡とカメラを下げ、顔を隠すために野球帽を深くかぶり、大きめのサングラスをかけた。
(双眼鏡で紫ちゃんの様子を逐一観察でき、更にカメラで不純異性交遊の証拠をばっちり映す‼…これを使って脅すか、最低でも教室に張り出せば、紫ちゃんはオレとの賭けどころの話ではなくなるはず‼ざまあみろだ‼)
嶋は完全変装して、図書館のドアを潜る。
図書館は二階建てで、一階が児童書を中心、二階が一般書の棚が並んでいた。学習室は一階児童書の閲覧席から覗ける配置にあって、見張りするには絶好の所だ。
子供に混じって、ふかふかのソファーに身を沈めつつ、嶋はしめしめと意地悪く微笑む。カモフラージュしようと、遠くの棚から漫画を一冊抜き出して顔を隠すように広げた。
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