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「…とうとう項、撫でちゃったよ。」
もそもそとベッドから上半身を起こして、えいやっと一思いにかけ布団を捲る。…結果。
「…ダメだ。夜の夢だけではなく、下半身まで馬鹿に‼」
嶋は片手をいっぱいに広げて、額を抑える。ん~、と小さく唸って、独白を続ける。
「夏休みだし、昨日はほぼ図書館と家を往復しただけで疲れマラ説はほぼ抹殺…。あとは、Ωと一つ屋根の下に住んでいるから知らず影響を受けている説だけど…。」
嶋はベッドから下りたち、バシッと一言。
「信じたくねぇ~から、却下‼」
叫びながら、本日もトイレに直行する嶋だった。
朝食を終え、先日約束した通り、体育服姿の同居人は嶋をある場所へと案内した。嶋は、建物の前に立ち止まり、ぽかんと口を開ける。
「…ここって。」
「そう。高校。」
一か月先まで来ないと思っていた建物が、どでんと聳え立っている。嶋は、相手に着て来いと言われた体操服の裾をびろんと引っ張りつつ、そっと呟く。
「…体操服着て来いって言うから、何かと思ったけど。」
「学校に私服で来るなんてナンセンスでしょう??…かといって、制服を着せると嶋って素直だから授業の時と大差なく改まってしまう気がして。」
勉強はリラックスしてやるべきだよ、と薄い胸をそらして同居人はにまっと微笑んだ。
紫が相手を案内したのは、高校の図書室だった。空調が効いていて、涼しい。図書室は、二つの教室が合体した形になっていて、手前が図書室、奥が閲覧室兼学習室となっている。紫が相手を連れてきたのは、奥の閲覧室兼学習室だった。
木製のデスクが六つ、横に三つずつ縦二列に配置されている。夏休み、というだけあってか。無人である。席に置かれている椅子六つはどれもが丸椅子で、背を預けられない分、嶋はこの席があまり好きではなかった。
「…どこ座る??」
変なところを遠慮する紫を鼻で笑い、同居人は自分に一番近い席に勢いよく腰を落ち着ける。呼応するかの如く。紫も彼の隣に座った。
「何からする??」
同居人が紫の指示を仰ぐと、本人は小さく笑って短く返す。
「まずは、基本の宿題からでしょう??」
二人っきりの勉強会が始まった。
校舎は人っ子一人いなくなったように静かで、四階隅にある図書室自体も音が少ない。懸命に筆を動かす嶋の耳に聞こえてくるのは、空調が稼働する低い音と窓越しに入ってくる幾分かトーンダウンした蝉の合唱くらいなものだった。後は自分で動かすシャープペンシルの、神経質に文字を紙に刻み込む音。紫と自分の会話する声。
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