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「…っな…‼」
わなわなと震える紫の前で、相手は明後日の方向を見る他ない。
「悪ィ…。冗談抜きで本気かと…。」
「も…もぅ…っ‼きちんと嶋の分を食べてよね‼」
相手はしかめっ面でむぅと口を尖らせる。ご機嫌斜めの御坊っちゃんに、嶋は微苦笑を浮かべた。
「紫ちゃんが作る料理はうめぇなぁ~…。」
「…おだてようったって、その手には乗らないから‼」
中心に向けて顰めた後は、ぷっくりと頬を丸くする。優等生のふくれっ面を眺めながら、嶋は食事を進めた。
「ミートボールんめぇ。」
「…だから、冷蔵だって。」
「から揚げんめぇ。」
すると、ふくれっ面は萎んで、ちらりと威力の抜けた眼差しが嶋に注がれる。
「…市販の衣じゃなくて、一からきちんと作ったんだよ。美味しくなかったら、はっ倒している。」
(むしろ、怖ェよ…。)
息をつこうとして、顔を上げる。
「…っつか、これいつ作ったの??オレが起きた頃には、お弁当ほぼ完成してたよね!?」
「今朝、だけど。」
心なしか、紫は俯いてぼそぼそと喋る。
「朝早く起きて、オレの分まで作ってくれたの??」
二人の昼食は、大体が個人で選ぶ。二人が家にいる時のみ例外で、その時は紫が作っていた。
「だって…。部屋のゴミを捨てる時、たままた見ちゃっうんだってば…。嶋がコンビニ飯三昧だってわかって…。少しでも栄養つけさせたくって…。」
「紫ちゃ…。」
嶋が伸ばした片腕は、相手に容赦なく叩き落とされる。
「か…っ、勘違いしないでよ‼僕は、アンタが部屋のどっかで野垂れ死ぬと困るから、だからこうして弁当を食べさせて肥えさせようとしてんの‼わかったか!?」
ビシィッ、と相手に人差し指を突き付けられて、嶋はこくこくと頷く。
(…いや、待てよ??じゃあどうしてわざわざ、から揚げを一から作ったり、ウィンナーをタコさんにする必要が…。)
沸いてきた心の声には、無視を決め込む。代わりに、からかってやろうと、悪戯に箸先で摘まんだ卵焼きを紫の眼前に突きつける。
「はい、紫ちゃん。“あ~ん”…。」
嶋は頬杖をついて、観察しだす。
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