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「ただいま~。」
嶋がダイニングの扉を開くと、同居人はキッチンで何やらごそごそとやっている。
紫は踏み台を使って、冷蔵庫の上にある戸棚に両手を突き出していた。戸棚の取っ手に指が触れる、直前。
「…ぁ…っ。」
均衡を崩し、紫の身体は大きく揺れる。手荷物を投げ捨てた嶋が、一直線に相手の元に向かう。
間一髪、嶋は相手の柔らかな身体を背後から抱きしめた。
「…し、嶋‼?え~、ヤダ‼近い近い近い近いっ‼」
獲物は胸辺りをぐいぐいと押し返してくる。嶋は苦渋の表情をするほかない。
「…わぁ~った。わかった。離れるから‼とにかく、ちょっとじっとしていて…。」
踏み台からずり落ちかけている紫を戻そうとαの青年が相手の腰に手をかけた…矢先。
「ひぁ…ッ」
甲高い叫びに、嶋の思考が分断される。くるりとこちらを振り向いた獲物の眼が怒りに燃えていた。
「ごめ…っ。紫ちゃん、ひょっとして脇弱い??」
「ちが…っ。アンタが変な触り方してくるからだろ‼」
乱暴な物言いに、嶋はムッと口を一文字に結ぶ。
「はぁ??…もとは、紫ちゃんが小っちゃい癖に高いとこ登るからだろ~??」
「小っちゃい言うな‼やらしい触り方して…‼」
「や…ッ‼男同士で脇腹摘まんだだけで、何でそこまで言われなくちゃならねぇんだよっ‼」
喧々諤々とやり合い…しばらくして、ぷっと紫が口元に片拳を寄せた。
「…ゆ、紫ちゃん??」
面食らった嶋に、Ωの青年は返す。
「僕達…。この不安定な体勢で、いつまでも言い合ってんなって思ったら…。何か馬鹿らしいなって…。」
「っくはは…‼」
口を抑えて吹き出しつつ、嶋は踏み台から大股一歩、遠のく。紫も相手の肩に手を置いて、踏み台からぴょこんと床に下りた。
「言えてんな。紫ちゃん、可愛い声だすし。」
「か、かわ…っ‼嶋ったら、またそうやってからかう…‼」
「からかってねぇって。本心だって。」
紫がとことこと駆け寄って来て、相手の胸を両拳でぽこすか殴る。無論、手加減しているので嶋は痛くも痒くもない。豪快に笑い飛ばしてやる。
「…あ~、笑った。」
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