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「…ふむ。顎出てっと、人は太ってみえるんだなぁ。」
「遺言は、それだけでいいの??」
柔らかな枕と化していた紫の太腿に、急に角度がつく。
…頭部を床に落とされかねない、と察した嶋は、慌てて言い繕う。
「いやっ‼…だから、紫ちゃんは例外だなって。」
「…。」
(おっ、額面通り受け取って大人しくなりやがった。)
しめしめ、と嶋は内心嘲り笑う。
「…ちょっとぽっちゃりして見える、いつもと違う紫ちゃんも、凄くかわいいよ。ぽよぽよしている肌を触りたくなる。」
傾斜が平坦に戻る。嶋がほっと胸を撫で下ろした、後だった。
「…嶋。」
紫が深く俯いて、同居人と視線がかち合う。若干潤んだ瞳が、嶋を捉えて離さない。
「み、見られていると集中できない…。」
じんわりと朱に染まった頬。リズミカルに瞬きを繰り返す長い睫毛。微熱を帯びた吐息が、嶋の鼻先に漂う。
「あ、うん。悪ィ…。」
「あと…。」
紫の手が、上に掲げられる。顔同士の距離が縮まる。嶋はごくりと喉仏を上下させる。
(ちょ、ちょ…っ‼これは、もしかするともしかするのでは!?だって、これってkis…っ‼)
口を半開きにした嶋は…次の瞬間、爆笑していた。紫が、相手の脇腹を擽っていたのだ。
「ふっ…ははははっ‼おい、紫ちゃ…っ‼それ、やめ…‼おわっ‼?」
ソファーの上に横たわって、暴れたためか。嶋の身体はごろんと転がり、床へと落下した。
起き上がってバツの悪い表情をする相手に対し、紫は満足そうに鼻高々に言い放つ。
「ねぇ??…誰でも脇腹は弱いもんだよ。」
「ここで張り合うなっつの。」
嶋は正面から手刀で、相手の胸辺りに突っ込む。
「嶋選手、着地10.0‼」
「新体操じゃねぇんだから。落ちたじゃねぇか。新手の攻撃は、やめろよ。」
「アンタが勝手に落ちたんじゃん。」
つんとすました横顔に、嶋はぐっと奥歯を噛みしめる。
「あんな狭いとこでイジり倒す奴があるか‼」
反論しながら嶋は同居人の隣に腰かける。しばらく置いて隙をうかがい、身体を横に倒す。すると、動きを読んだかの如く、紫が立ち上がる。一方の嶋は、硬くて冷たいソファーに片頬を埋めていた。
「トイレ行ってくる。…ちょうど、テレビがCMに入ったし。」
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