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嶋はΩの嬌声をもっと聞きたいと、相手が自分を受け入れる器官の入り口に指先を這わせた頃。紫が待って、と願い出た。
「…喉乾いた。キッチンに行きたい。」
咄嗟に嶋は、キャスターの上を見た。…ミネラルウォーターのボトルは、まだ蓋さえとっていない。指摘すると、紫は急いで頭を横に振った。
「ううん。…水じゃ嫌なんだ。味のするものが飲みたい。ちょっとごめんね、すぐ戻る。」
紫がそそくさと部屋を後にする。一人残された嶋は、ベッドの上で座ったまま、ぼうっと自身の手のひらを見つめる。
Ωをこの手で抱いているなんて、嶋は自分でも信じられなかった。生々しい手触りが、相手の温もりが身体からすーっと引いていく。沸騰しそうに込み上げていた本能が勢いを弱め、代わりに理性が働き出す。ふと、夕方にΩへと告げた自身の言葉を思い出す。
『…賭けは、これで全部なしだ。約束だったよな??嘘をついたら、出ていくって。オレは、明日ここを出ていく。言っておくが、見つけたマスターキーはオレが隠し持っている。今晩、フェロモン促進剤を服用したお前が最後の隙を狙ってオレを襲いに来るなんて勘弁だかんな。明日の朝、お前にマスターキーを返してやる。』
煩悩で曇った頭でも、何かが引っかかる。…あのまま、一晩部屋に閉じこもっていれば、間違いなく平和に帰れた。
『…セックスしよ、嶋。』
紫の言動は、いつだって若いαの思考を狂わせる。…嶋は、二人分の温もりが抜けつつあるベッドに寝っ転がって、じっと考える。
(オレが今、武器として唯一使えるのはマスターキーだ。紫ちゃんはこれで、オレの寝室には入れなくなったから。)
嶋は、もぞもぞと寝返りを打つ。
(そういや、紫ちゃんがオレに抱いてって頼んだのも、マスターキーは隠しているって話をした後だった。)
(…てっきり、今までは紫ちゃんがオレを好きで、両想いになりたがっていると思っていた。だから、柄にもない夜這いまでして…。なのに、あっさり身を引いて…。今日のぶっ飛んだ提案も、未練があるから一晩だけ抱いてくれってものかと思っていた。)
(でも、本当にそうなのか??毎晩わざと短い発情期を患って、ヒートしたオレを誘惑するような奴がこんな簡単に諦めるものか…??)
万が一、と嶋は天井を仰ぎ見る。…心の片隅に一抹の不安が過った。
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