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「何これ。」
口調に細心の注意を払いながら、嶋は相手に訊く。上半身を起こした紫はというと、ベッドの淵に腰かけて、頭を垂れていた。泣いているのだろうか。髪が邪魔で、目元がよく見えない。
「…ねぇ、紫ちゃんってば‼」
黙りこくるΩの横顔に、嶋は水で濡れた避妊具を押し付ける。賭けに続いて、二度目の裏切りだ。許せるわけがない。
「っふ。」
Ωの肩が僅かに震えた、かと思うと今度は上下に大きく揺れた。
「あははっ‼はははっ‼」
トチ狂ったように爆笑すると、紫は若いαに軽蔑の視線を送る。
「あ~…、おかしい。…嶋ったら、本当にこの僕がアンタみたいなのに興味あるとでも思ったの??」
「はァ‼?」
嶋は動揺を隠しきれない。優等生のΩは続ける。
「αに中出ししてもらうの、ちょっと興味あってさ~…。αの誰かに、抱いてもらいたかったんだよね。」
「そんなふざけた話、許されるわけねぇだろ‼」
嶋は気色ばんで、Ωに詰め寄る。
「…なら、賭けは!?あれも、オレじゃなくて、αなら誰でも良かったっていうのかよ‼?」
優等生のΩはどこ吹く風だ。ベッドに下ろした両脚をブラブラと振ってみせる。
「うん、そうだよ。…本気にしたの??僕だって、病気を拾いたくはないし。クラスのαならまあまあ安心そうだから、ちょっと餌バラまいたらアンタが食いついてきただけって話。」
「…。」
嶋は裸のまま、避妊具をベッドの上に投げ捨て、Ωに背を向ける。部屋を出ようと、ドアノブを握った…矢先。
「ああ、出ていくの??出てくんなら、見送りくらいはさせてよね。一夏とはいえ、僕はアンタのお世話をしてあげたんだし。」
紫は笑い声混じりに、αに言葉をかけた。あまりに軽薄で、責任感のない、屑みたいな台詞。
「…いいけど、次に一言でもオレに声をかけたら容赦なくブン殴る。」
そこで初めて、紫が押し黙った。嶋は、力み過ぎて血管が浮き出そうな拳をぶるぶると震わせて、喉から声を絞り出す。
「…オレが、お前を今夜抱こうとしたのは、お前が本当にオレに好意を寄せていると思ったからだ。お前からの“好き”を、オレは例えポーズだろうと“好き”で返すべきだと思った。」
言い終えた嶋は、部屋の扉をピシャリと閉めた。
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