アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
118
-
顔を若干持ち上げ、嶋は迷わず行くわ、と声をあげる。
(…もう、そんな季節か。)
思えば、と嶋は俯く。紫とは季節らしい行事一つせず、離れ離れになってしまった。市販の花火くらい、マンション付近の場所を探せば幾らでも出来たのに、と後悔してしまう。
(紫ちゃん…。)
ほぅ、と息をついて…嶋は素っ頓狂な叫び声をあげていた。
「あ゛~ッ‼?」
『…‼?』
携帯を握り直し、嶋は口角から唾を飛ばして電話相手に文句を言う。
「おいコラ、良太‼てめっ、何紫ちゃんにオレの“あのこと”を教えてんだよ‼」
返ってきた答えはシンプル極まりないものだった。
『はァ…??おいコラ、はこっちの台詞だっての。何で俺が、紫なんかに嶋の“あのこと”…。嶋が養子で、今住んでいる家族とは血の繋がりがないなんて教えなきゃいけねぇんだよ。』
「でも、事実、紫ちゃんはオレが養子だって知っていたぞ‼…育ての親がβ同士だからって、オレが普通の恋をしたいって…フェロモン関係抜きの恋人を将来作りたいってことも‼」
嶋は思い返す。タクシーの窓。開いた隙間から、紫は呟いた。
『…それでも、男でΩの僕は、嶋の恋人にはなれないんでしょう??』
月曜日は、こうも息巻いていた。
『しッ、嶋が悩んでいるのって、どーせさっき会っていたβかαの女の子のことでしょ??色恋沙汰で騒音被害出さないでくれる??』
(あの時、紫ちゃんがΩを外したのはオレがフェロモンを持つ体質のΩを恋愛対象外としていた点や、オレの理想が両親と同じβであるのを知っていたからに違いないんだ…‼)
「今考えても、紫ちゃんはオレが養子だって事実を知っていたとしか思えない‼大和だって、知らないんだぞ。犯人はお前しかいねぇだろ‼」
市川も市川で、嶋に疑われて激怒している。
『知んねぇ~よっ‼じゃあ、あの目の上のタンコブΩが透視能力持ちなんじゃねぇの‼?…少なくとも、ダチの秘密ペラペラ言うほど俺は軽い男じゃねぇの‼生憎と‼』
「…なら、誰が言ったっていうんだよ‼」
はあはあ、と双方荒い呼吸を繰り返す。殺気立つ会話を回避しようとしたのか、市川が陰湿な声を出す。
『…なあ、智明君よォ??お前、随分とそのΩに情が移っているんじゃね??』
「うるせぇな…。」
威嚇体勢になる嶋に、電話向こうの友人は諫めにかかる。
『お前と喧嘩しようってわけじゃねぇよ。耳よりな情報が一つあってな??』
「…とっとと言え。」
苛立ちを隠さない嶋に、友人はおお怖い、とわざとらしく声を震わせてみせる。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
118 / 146