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『その紫がさぁ、今夜はあの大和クンとデー…出かけるらしい。』
お前な、と嶋はドスの利いた声で返す。
「デートって言おうとしてやめたの、わざとだろ。…しかも、その木津を今夜誘って、一人になったからオレに声かけてんだろ。」
『失礼な‼』
市川は本気で怒っていた。
『最初っから三人で行くつもりだったし、俺は‼』
(…怒るポイントが何か違う気がするけど、まあいいや。)
天井を見上げ、嶋は内心ぽつりと呟く。
(ふぅん…。あの紫ちゃんが、よりによってオレの友人の木津とねェ…。)
嶋が瞬きすると、瞼の裏に浴衣姿の二人が仲睦まじく身を寄せ合い、屋台と人込みの中を歩く様が鮮明に想像できた。
(そういや…。)
嶋は思い出す。いつぞやコンビニで、木津は紫へのボディタッチが激しかった。あの時の紫は、木津から逃れようとしている風に見えたが、あれも自分の気を引くための芝居だったか。
(まぁ、オレには関係ねぇし。)
携帯を握りなおして、嶋は友人に単純な質問をする。
「なぁ、夏祭りっていつからだっけ??」
『ええ~??厳密には決まってねぇけど…。屋台とか揃っているのは、午後六時くらいからかな。』
ちょっと考えて…嶋は決断する。
「わぁ~っりィ、良太。オレ、夏祭りには行けねぇわ。」
『は‼?』
「行くとこあんの、忘れていたわぁ~。っつぅわけで、今夜の夏祭りはパス‼じゃあな~‼」
耳から離した携帯から、まだキンキン大声が響いてくる。
『はァ‼?ふっざけんな、おまっ‼俺に一人でリア充の巣窟に突っ込めってのかァァァ~‼』
嶋は、無慈悲に通話を切った。
嶋は、夢を見ていた。
一瞬にして非現実だとわかるシャボン玉が宙をふわふわと漂う、どこもかしこも白い空間に嶋と彼の天敵であるΩは向かい合って佇んでいた。
『番、番って…うるさいな。』
夢の中の紫は、曇りガラスみたいな瞳で訥々と言葉を吐き出す。
『僕は、嶋の番にはならないから。』
ああ、と嶋は答えを察した。…夢の中の紫は、過去の彼が喋ったことをなぞって、再生するみたいに唱えている。
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