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「ごめんなさいねぇ~。あなたは薫君のお友達なんだろうけど、薫君ったら着付け済ませたら、多分違う子と夏祭りにさっさと出かけちゃって。…あの子があなたと何か、約束をしていたんなら…失礼しちゃってごめんなさいね。」
嶋はぶんぶんと手を振って、全力で否定した。
「いえいえ、おばさん‼あの、オレはゆか…。」
そこで嶋は初めて気づく。
(目の前の紫の母親も、苗字同じだから“紫”って言ったら呼び捨てみたいになる…。…とはいえ、ちゃん付けとかできるわけないし‼)
嶋は渋々、同級生を名前で呼んだ。
「…薫君に用事があったんじゃなくて、自分の忘れ物を取りに来ただけなんで‼」
紫の母親は足を止め、あら、と口元に手を持っていく。…おっとりとした態度や口調、人好きそうな垂れ目は紫に似ても似つかない。う~む、と内心、嶋は唸る。
(紫ちゃんの貴族っぽい優雅なところは、似ているっちゃ似ているけど…。)
「…忘れ物??何かしら??」
「ああ…。服です、服。Tシャツ二着だけ…。」
「…うぅん。」
紫の母親が項垂れたのを見て、嶋はペットの兎が耳を垂らして反省している図が何故か頭に広がった。
「申し訳ないわァ…。私ったら、滅多にこの家に帰ってきていないもんだから、何がどこにあるのかさっぱり…。」
(…なら、オレのが詳しいです、紫ちゃんのお母さん‼)
嶋は、何とか元気のない大人を励まそうと試みる。
「あ~、ダイニングで見かけませんでしたか??…じゃあ、きっと薫君が自分の部屋に置いているんじゃないですかね??」
嶋の問いかけに、紫の母親はゆったりとダイニングにはなかったわねぇと呟く。
(…まあ、あのしっかり者の紫ちゃんのことだからダイニングに畳んで積んだまま放置ってこたぁまずないわな。)
「じゃあ、オレ、薫君の部屋に入っていいですか??」
私が入る、と言われるかな、と思ったら、二つ返事で許可された。
嶋が元同居人の自室に足を踏み入れると、続けて何故か彼の母親までやって来る。戸惑っている嶋に、Ωの母親はえへへと小さく微笑んだ。
「…息子の部屋、近頃めっきり入れてもらえないから。」
(アンタもかいっ‼?)
嶋は胸の内で、ひっそり同級生の母親にツッコミを入れた。…今度は母親の前で家探しかな、と嫌な予感を抱く嶋だったが、案外簡単に服は見つかった。勉強机の上に、ビニールに収納した状態で嶋のTシャツは二着とも置いてあった。嶋にとっては意図不明な行動しかしないΩだが、Ω自身にとって嶋はある程度行動予想のつく相手らしい。若干、嶋は劣等感を覚えた。
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