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『嶋智明を愛しちゃったばかりに、だよ。』
「…。」
嶋は、前歯で下唇を噛んだ。声の主は続ける。
『それなのに、嶋ったらさぁ…。紫さんがお膳立てしたあれやこれやを全ッ部ことごとぐ粉砕していった。紫さんは代償に、身体に影響が出るフェロモン促進剤を使って夜這いして、倒れた。捨て身覚悟で、ベッドインして…でも、結局惨めに空振りして終わった。』
ねえ嶋、と木津は友人の心に訴えかけてくる。
『…紫さん、ボクに頂戴よ。』
「…何、言って。」
わっかんないかな~、と友人は声を荒げる。
『お前がいつまでも頑固に恋愛観変えないからさぁ。紫さんの心身は、今、ボッロボロなんだよ??…お前はせめて、自分の恋愛観を紫さんに伝えて、Ωはタイプじゃないってこっ酷くフるぐらいはすべきだった。』
「な…ッ」
『残酷だと思うのか。』
鋭く問いかけられ、嶋は答えに迷う。友人は、続ける。
『酷いと思う人の心があるんなら、今まで自分が紫さんにどういう態度をとってきたか気づくべきだろ。紫さんだけじゃない。下駄箱に置かれたラブレターの一通一通、出していた女子達含めてだ。…嶋、お前がやっているのは、好意の生殺しにしかならないんだよ。』
「…。」
黙る嶋に、友人は声をあげ続ける。
『今までもらったラブレターの、一体何枚にお前は目を通してきたんだ??今まで目の前で告白してくれた女の子の、お前はどこを見てきた??』
見てないだろ、と友人は無慈悲に指摘する。
『悪いけど、紫さんを問い詰めてわけを聞かせてもらった。生まれた年に大差はないんだ。…大方、ボクも見当ついていたしさ。でも、養子だとか血が繋がっていない家族と一緒に暮らしているからって、何だよ‼』
いつの間にか、電話の相手は涙混じりに叫んでいた。
『“好き”は“好き”だろっ‼お前が今まで目もくれず、捨てていったラブレターにも気持ちの片鱗は入っていたはずだ。お前が適当な理由ではぐらかして、“好き”を突っ返した女の子達の中にも、紫さんと同じように本気だった子はいたはずだ‼』
お前は何を見ているんだよ、と木津は友人を一喝した。
『将来とか世間体とか、そんなのお前の独りよがりな理想でしかねぇよ‼…ちゃんとそこで“好き”っつって言っている本人を見ろよ‼今、お前がどこにいんのか知んねぇけど、ボクの隣には紫さんがいる‼お前の事情で決めた生き方に散々振り回されて疲れた子が、お前よりボクの近くにいるよ‼』
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