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ぽつんと言うと、木津は地面から立ち上がり、土を払って居住まいを正す。
「二人には黙っていたんだけど、ボク、“Ω偏愛者”でさ。」
「え??」
目を点にする嶋に、優等生が解説する。
「ええっと、確か…“愛好家”とかそういった傾向がある人の一種だよね。αやβ、Ωにもいるかもしれないけど。とにかく、Ωの生態や肉体に興味や興奮を覚える人。」
「ふぅん…。」
相槌を打ちつつ、嶋は木津と紫の合間に立ち、両手を大きく広げる。…紫はそそくさと、愛しいαの影に身を隠す。
「…つまり、紫ちゃんに限定せずΩ大好き人間ってわけなのか、大和。…通りで、お前は紫ちゃんに対してスキンシップ過激だなと思ったよ。なるほどねぇ…。」
「親しげにボクに話しかけながら、紫さんを庇う姿勢に出るのやめてもらっていいかな、嶋??男の嫉妬は見苦しいよ??」
睨み合うα達をよそに、元同居人の背に匿われた紫は魂が抜かれたかの如く、ぽかんとしている。嶋は、心配になって相手の肩を揺らすと、ようやく息を吹き返す。
「し…、嶋、あの…。これ、ど…、ドッキリなの??」
「何でそんな斜め百二十度辺りに思考をカッ飛ばすんだよ。本心から言っているっつの。その…今すぐってわけじゃねぇけど、答えは…考えるか??」
「か、考える必要なんてない。でも…。…ぅ、ええ~??僕なんかで、本当にいいの??」
かぁっと両頬を赤くさせて俯くΩに、嶋もごくと喉を鳴らす。αは紫の顔を覗き込むようにして…唇を繰り返し啄む。
「…アホか。紫ちゃんがいいんだよ‼紫ちゃんじゃなきゃ、ダメだ‼」
嶋の強い言葉に押され、Ωはそろそろと頷いてみせた。αは、紫を抱きしめる。嶋の胸元で、Ωはぼそぼそと呟く。
「嶋、汗臭い…。」
「…誰かさんのために走ったの‼悪いかよ…っ」
ふんと鼻を鳴らす嶋の胸に、Ωはこてんと頭を預けた。
「ううん…。嶋の匂い、僕はそんな嫌いじゃないもん。」
「…っ‼」
赤くなるαの友人を横目に木津は、携帯を耳にくっつける。…しばらくして、大声をあげる。
「ああ、良太??今どこいンの、えっ??家でゲームしている??…祭り行こうぜ、祭り。うん??デート??…んなの、どうでもいいじゃん。ってか良太、予想するに嶋にでもフラレたんだろ??フラレたもん同士、仲良くやろうぜ。」
結ばれた二人に木津は背を向け、立ち去っていく。思わず、二人は声をかける。
「木津~っ‼なんか悪かったなぁ~‼二学期にどっかで埋め合わせしてやっから~‼」
「木津君、また教室で喋ろうね‼学校で、Ωの話出来る人、僕の周りではそんなにいないからっ‼」
三十秒ほどしたところで、背を向けたままの友人はひらりと片手を掲げてみせた。…口では悪態をつきながらも、後ろ姿はどこか誇らしげですらあった。
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