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September
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午後十時、違法アップロードされたテレビ番組を見る。
その違法動画は謎の余白を画面に残し、隅に置かれた小さなワイプに本編は映っている。
別に世論に興味は湧かないし、自分は見も聞きもしないのだがじゃあ何故居間でこんなものを見ているのかというと、これは最近酒のつまみに動画を見るのにハマっている同居人の趣味だ。
俺は遠山トーマという名で、おそらく一回り近く上の八木という男とどういう縁か同居している。
もう同居を始めて四季は一通り経験した。
八木さんと過ごす時間はすごく刺激的で、堕落した俺の生活が明かに変化した。
今だってそうだ、この同居人に会わなければここまで芸能人の名前なんて覚えやしない。
…
その”変な”動画は著作権の削除対策のために、歪んだレコードのような変な速度にわざと編集されている。
人の声は無機質に聞こえて、感情がインプットされていないロボットが語りかけているようだった。
「こーいうのって普通の速度で見れねえかな、せっかく面白い漫談してるのにまともに聞き取れやしねえ、」
テーブルに置いたビールを手に同居人は呟く。
ビールに適していない部屋の温度のせいで、液体化した冷たさが机に小さな水たまりを作っている。
「…内容は分かるんだからいいじゃないですか」
「気持ち悪いんだよこのリズムがさぁ…」
映された動画に向けて言っている、ということは自分はよく知っているのに、何だか己の胸に「気持ち悪い」という矢が突き刺さって変に心臓が痛む。
実は俺は何故かこの気持ち悪いリズムに同族意識を感じていた。毎日365日飽きもせずに回し続けるこの動画に。
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