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☆いつもの黎明
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「ねえ、」
「ん?」
年末、大掃除も片付け、縛られた大量の本の中ララクシアはレットに話し掛けた。TVを見ていたレットはその声に液晶に映るメーターを下げる。
「もう、今年も終わりだね」
「そうだねえ…なんかさ、不思議だよね…寝て起きたら全く世界が変わって見えるんだ」
「何も変わらないのに、人は節目が欲しいんだよ…赦しであり、休息でもあり、何かに託けないと、それすらも」
「…うん、正しいかもね…実際俺だってそう、
期限がないと何にもできないし、やる気にもならないからねえ…」
ひとつ欠伸をし、レットは言った。ララクシアは石油ストーブの前を占領しながらその上のやかんを取り、細い腕を卓上のティーパックの缶に伸ばす。レットはその缶を少しばかりララクシアの方へ寄せた。
「…それは僕もだ、何かにつけて、赦しを…」
細く骨ばかりの指が缶の中身をつまむ。ぴんと糸を張り、持ち手を持ってティーカップの中へ落とす。そこに湯気の立つ湯が流し込まれた。レモンの香りが二人の鼻を掠める。
「あ、ああ…わかった、そうだね、毎年の…」
「…君はやっぱりきれるね、頭が」
「ララが居るからだよ…君に釣り合うようになりたいの」
「まだ言う…僕の憧れだというのに……」
レットの掌がララクシアの少し痩せた頬を撫でた。そのまま柔い銀の髪はレットの胸板へ収まり、一呼吸おいて彼は顔を上げる。レットはそっとTVの電源を落とした。服の擦れる音が一等目立つ。
「…君が言って、それが一番…僕に効くから」
「ふふ、うん…わかった、」
“病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、死が二人を分かつまで”
「はい…君を愛することを、誓います」
「うん、俺も、誓います」
形のいい手は恋人の長い銀髪を耳に掛ける。
また、骨張った細い指は相手の白髪に指を通し、軽く遊ばせてから耳に掛けた。静かな熱の中に、僅かな体の動きで床が軋む音が響く。片方は軽く体を反らせて伸ばし、片方はまた背を曲げて屈めるように。
丁寧なくちづけの後に二人の金の視線が交わった。無言のまま、そのまま互いの瞳を見つめてばかりいた。ララクシアの一つの息によって、真剣そのものであったレットの澄んだ美麗な表情は崩れ、またいつものようにふわりとはにかんだ。
「ああ…胸が苦しい」
「あ、ねえ…顔逸らさないで、見せてよ、かわいい顔…」
「いやだよ、誰のせいだと思ってるんだい…君はもう一度自分の顔を見るべきだ」
「見たよ、ララの目の中に居た」
ララクシアはふんとひとつ鼻を鳴らし、真赤に耳まで綺麗に染まった顔を少しばかりレットの方へ向けた。
「…どうだった」
「ララの目の中に居た俺の目の中にも、ララが居た」
「馬鹿、」
「さっき褒めたくせに…」
軽く頬を膨らませ、レットはララクシアの腰に掌を回す。ララクシアはそのまま素直に抱えられ、本の海から唯一脱した寝台へと横たえられた。
「神聖な誓いの直後に?」
「えへ…なんか、堪らなくなっちゃって……」
「何がだい、君だって肌が薄いんだからもう、顔が真赤なんだぞ」
レットはララクシアの履物のボタンを外した。人よりずっと細い腰にようやく留まっているような履物は容易に降ろすことができた。ララクシアは卓に手を伸ばし、TVのリモコンを手に取ると急いで電源の鈕を押す。少し抑え気味の新年を迎えようとするTVの音声が部屋に流れた。
「あ、ねえ…」
「このままの空気じゃ、僕がだめになる…」
「まあ…いいか…ララがそうしたいなら」
また視線の交わった時、レットはララクシアに接吻した。今度は長く深く、息継ぎも交えてのものであった。ララクシアは息のタイミングを逃し、今にも喰らいたい気持ちを抑え、優しく接するレットの胸板を叩く。
「っは、きみ、は…ぁ……」
「やっぱり…ララは下手だねえ…かわいいからいいと思うけど……」
「ふ、ぅ…ね、君は…堪えてるのかい…僕には分からないけど…いいよ、喰らいたいなら、頭から……」
「…これも、赦しかな」
「僕個人の問題さ…」
白く形のいい指がララクシアの後孔の縁を撫でる。条件反射で分泌した粘液を纏わせ、指の腹で抉じ開けるように中へと侵入した。指のなだらかな凹凸を感じ、ララクシアの腰が震える。そのまま二本目の指も受け入れ、しばらく中を撫ぜられた後三本目も迎えた。
「ぅ、あ…!」
「あ、まだ全然締まる…じっくり拡げてないからか…」
「や、はっ、うう…きみ、ぃ…だめなとこ、ばっかり…で……」
「ん…ごめんね…でも今日ばかりは、好きにさせてもらうよ……」
「ぁ、まっ…まだ、おちついてな、」
レットは指を抜き、そこにすっかり反応させた峰を当てた。ひくりとする後孔は熱く、一度レットのそこに触れるとぎこちなく揺れる。
「はは、揺れてる…えっちだね、欲しいんだ」
「だ、って…きみが、ああ…だめだ、ねえ…僕、多分、とても恥ずかしいくらい気をやるから、ごめんね……」
「いいよ、むしろすごく見たい」
「それも、もんだ、い…っ、ぁ……」
ララクシアは無自覚に腰を落とし、先端を飲み込み始める。それより先が少し怖いのか、軽く腰を揺らすばかりになっていた。
「は、っぁ…ぁ、まっ、んぐ…!」
レットは我慢ならず、ララクシアの細い腰を掴んで勢いよく引き寄せた。彼と相性の良いレットのそれはララクシアの発情し膨らんだ弱点を抉るように刺激し、中が締まる度にララクシアの体が跳ねる。
「ごめ…ん…あ、すごいね…ララの弱いとこ、目立ってる……」
「や、いうな、ぁ…あ…あう……」
「ん…俺も辛い、から…我慢効かないや…」
半分本能のままになっているララクシアを他所に、レットは腰を打ち付けた。粘液の音がTVの音声と混ざり、どこか他方面から見える羞恥をララクシアに植えつけた。服の上から見えるつんと張った胸に手を伸ばし、それを軽く爪で引っ掻くように弄ぶ。中は更に熱を増し、レットの耳元であえぐララクシアの声も甘く蕩けていった。
「んあ、っぁ、は…っう、んん…ひっ……」
「っ、ふ…気持ちいい…ララ、ちゃんと成長してるんだね…こうやってる、と…すごい分かる…」
「ぁ…?う、ん……ふぁ…あっ…ん…」
思考を手放したララクシアはただ分からずに頷き、頬に添えられた手に従って舌を軽く出した。そのままそれを食むようにして接吻し、レットがひとつ互いに聞こえるほどの嚥下の音を立てるとララクシアは一等後孔を締めた。TVでは街で若者達がたった一年の為に声を枯らしている。アナウンサーの声とララクシアのあえぎが溶け合った。
「ぁ、あ…っ、ひ…!」
「あ…ララ、いく…?」
「ん、ぁ、っは……ぅ…!」
「う…し、まっ…!あつ…」
ララクシアは俯き、がくがくと涎を零しながら達した。長い間とろとろと出る精液はシーツまで落ち、いやらしい音を立てる。浅くなる息を口吸いで調節し、ララクシアの痙攣も僅かになった時、TVからクラッカーのような音が聞こえた。
まさに年を越した若者が浮かれ、祝い喜んでいる最中であった。レットは目の前の蕩けきった恋人の乱れた長い前髪をかき分け、赤く汗の乗る額にくちづけた。ララクシアは理解はできていなかったが、レットの様子が先程までと少しばかり違うことは感じられた。
「…今年も、よろしくね…今言っても、あれかな…でも一応、ね」
「っう、ん……?…うん……」
ただ頷くばかりのララクシアに微笑み、レットは再び律動を始める。今度はあまり負担にならないよう、少し優しく。レットがはにかむとララクシアも口角を上げ、互いに汗の滲む掌を握りしめていた。
「ぁ、っ…う、んあっ…ふ、くぁ…あ、あ…!」
「ね、もう、出る、よ…!ん、ん……」
「っあ、あぅ、ひぁ……」
レットは腰を震わせ、手を強く握りしめる。腹の中に確かに溜まる精液にララクシアは再び達し、涎をシーツに落としてからどさりと倒れ込んだ。
「…ララ…ほんと、中に出すの、好きだ、ね…」
「っぁ…ぅ……」
「まだ、ひくひくしてる…掻き出すだけ出しちゃうね……」
「ん……」
未だ痙攣するララクシアの後孔を指で広げ、中から溢れ出る精液をレットは掻き出し、ちり紙に取って丸めて捨てた。それからタオルでララクシアと自分の体の汗だけ拭き、レットはトランクスだけ履いてしまうとそのまま布団に二人で埋もれ、眠りについてしまった。
「ぁ…?んん…やだな…僕、相当……」
朝、ララクシアはレットよりも早く目を覚ました。痛む体に掠れた声で夜のことを察したが、点いたままのTVを見やると左上には一月一日と文字があった。ニュースは一等普通のもので、あまり頭が働かない朝のため、電源を落とせば昨晩散々泣いた、泣き腫らしのある自身の顔が写った。
「なんて…煩悩しかなかったなあ…罰が下るかな…」
ララクシアは間抜けな顔をして眠るレットの頬を指の背で撫でる。昨晩の珍しく一等雄らしい顔とは全く違う表情であった。その差異にララクシアは少し微笑む。
「まあ…そのときは君もだよ、レット」
「ぅ、ん…?」
「全く間抜けだね…でも、そっちの方が僕には落ち着くよ、昨日みたいな顔、しょっちゅうされちゃ身が持たない……」
「ん……あえ…らら…?」
寝ぼけ眼のレットはララクシアへと温い掌を伸ばす。視界が正確でないのか、手探りでララクシアの存在を確かめると目を細めてはにかんだ。その掌をララクシアは取り、口元に近づけて呟く。
「…今年もよろしくね、」
「うん…ふふ、よろしく…やっぱり、覚えてない?」
「え?何がだい」
「してるときに年が明けてさ…ララにおんなじこと言ったら、必死に頷いてた」
「い、いいよ、僕の知らないことだ…知りたくもない……」
ララクシアはレットの肩をひとつ叩いた。レットはふふ、と笑ってから身を起こし、動けないララクシアの代わりにコーヒーを持って来た。
「あ、ありがと」
「うん…体の痛みが取れたら初詣行こうね…あ、その前にお風呂か…それに関しては朝風呂がいいかな、支度するよ」
「…うん、あ、ねえ…おせちも食べたい」
「ふふ、わかった…なんかさ、した次の日のララって、とてもわがままで好きだなあ…」
「君は…人がいいのか悪いのか…わからないね」
ララクシアはレットの背にそう語り掛け、布団に包まったままぼんやりと新調されたカレンダーを見、外で新年の挨拶を交わす近所の人々を窓から眺めていた。机の上にはひとつ、冷めたレモンティーが昨年の温度を持ち越していた。
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