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神崎が用を終えて、課内から出ていく。
どうにも神崎の様子が気になり、席を離れエレベーターへ向かった。
正直、何から話していいのか分からない。しかし、このまま昨夜の事をなかったことにしたくはなかった。
「神崎さん、すみませんっ!」
宮本の声に気付き、エレベーターの前で振り返った神崎はあからさまに機嫌が悪い表情をしていた。
「なんだ?不備あった?」
話しかけるなよ。
そう間接的に抗議されている。
それに気づかないふりをして会話をした。
「いいえ。体、大丈夫かと思って。」
「お前・・・ちょっとこっち入れ。」
神崎は奥の喫煙室に電気がついていないことを確認して、宮本を促した。
迷わずについていく。入った部屋は煙草の臭いがして不快だが、始業直後の今は使用する職員もおらず、話をするのには最適だった。
「昨日はありがとう。でもな宮本」
睨むような視線。牽制の意味を示している。
「忘れろ。まあ、俺を脅したいとか考えてるなら好きにすればいい。」
「何いってるんですか。そんなつもりないですよ。」
神崎にこんなにも真っ直ぐ見つめられたのが始めてだった。美しく強い瞳から目が話せない。なんとか笑みを浮かべて会話を返す。
「お前のその笑顔、胡散臭い。」
「困りますよ。普通に笑ってるだけなのに。あと、俺偏見とかないんで」
「は?」
「マイノリティ。、、、最近はLGBTって言うのが流行りですか?」
「どう、なんだろうな」
「でも、神崎さんはこんなに仕事が出来て綺麗なんですから、自分を大事にして欲しいなぁとは思います。」
これは本心だ。神崎に伝わるだろうか。
「なんだよ、それ」
先程までの強い視線が揺らぎ、目を逸らされる。チャンスだと思った。
「プライベートなことなんで、口出しちゃいけないのわかってます。でも、あんなの毎回してたら、、、」
「いや、昨日のはハズレなだけだから。まあいい。もうお前とはこの話ししたくないから忘れてくれ。」
「神崎さん!・・・仕事やめたりしちゃだめですよ。俺べらべら人に話したりしないし、なんだったら俺が相手になるんであんな真似しないでください。」
神崎は驚いた顔をして、次第に笑い出した。声をなんとか押さえながら顔を手で隠し、苦笑する。
「ふっ、なにいってんだお前。」
「俺、男もいけるんで大丈夫です。」
「なんだそれ。・・・仕事はやめるつもりないよ。こんなことで。」
緊張していた空気が一気に緩まる。まあ、笑われても仕方ないことを言った自覚は自分にもあった。
「あと、宮本が相手ねぇ。まあ考えとくわ。」
神崎がドアに手をかけ、それじゃあ、と一言発し出ていく。
神崎に何一つ言いたいことを言えなかった気がする。だがしかし、来たときのように完全な拒絶はされなかった。適当にあしらわれたような気がするが、次に仕事で会ったときも恐らく今までのように話すことが出来るだろう。ノープランで相手を引き留めた割にはよい結果が残った。
本当は聞きたかった。
男なら性欲を発散する場所が必要なのは分かる。確か隣接するあのビルにはそういった恋愛趣向の人が訪れる店があるのも知っている。きっと、所謂一夜の相手を探しに神崎も来たのだろう。
あの男も 野良ネコ と言っていた。その界隈では神崎は有名なのだろうか。
恋人は作らないのか。
体は本当に大丈夫なのだろうか。
心は、大丈夫なのだろうか。
らしくもなく、他人を心配していることに気付き、宮本は自分を笑った。
これで神崎を手に入れられたら、それはそれで面白い。
今、付き合いたいと思う女性もいない上、神崎以上に美しいと思える人はいない。
彼に自分の時間を割いてみよう、そう思った。
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