アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
06.地獄の晩餐
-
時計の針は23時を回っている。
案の定。
「もう!いい加減にしてくださいよ!毎日、毎日帰宅が遅いことでも怒っているのに。こんな時間に職場の方を二人も連れてきて夕飯を食べさせろですって?」
玄関で怒りをあらわにしている妻は綺麗な人だった。
こんな時間だ。
化粧っけもないが、ゆるい波を打っている栗色の髪。
エプロンを付けて主婦業に熱心に取り組んでいるさまはよくわかる。
「すまない」
保住は手を合わせる。
「もう!」
そんな二人の様子を見て、悪びれる吉岡に対し、隣にいる水野谷は笑っている。
「っつか、普通、もうここに来ちゃっているおれたちのことで大ゲンカするってひどくないですか?」
「まあ、普通はおれたちにはいい顔をして、影で怒るものだがな」
ひとしきり怒られた後、文句を言いつつも保住の妻は二人を見る。
「あんたたち。なんでも食べられるわね?」
「は、はい」
「よろしい。上がりなさい」
ものすごい不機嫌さだ。
二人は恐れ戦き保住を見る。
彼は苦笑いだ。
「気性が荒くてね。見苦しいところを見せてしまった」
「でもこうなるのってわかっていたんですよね?」
「まあ。もう少し抑えるかと思ったんだけどな~……。遠慮ないね」
保住に促されて居間に通される。
一軒家だ。
すごい。
マイホームを持っているなんて、独身の二人にはあこがれだ。
「子供が寝ているから、静かにしてもらえるか?」
って。
保住の妻が一番賑やかだと思うが。
「もちろんです」
「こんな夜分にお邪魔しているおれたちが悪い」
ソファに座ると、なんだかほっとする。
家庭だ。
これが家庭なのか。
佐和子と結婚したら、こんな空間を自分も持つのだろうか。
ネクタイを緩めてほっとした。
「保住さん、奥さんのどこが好きで結婚したんですか?」
「どこがって。騙されたっていうか」
「騙された?」
三人がこそこそしていると、大きなお皿にチャーハンが山盛り出てきた。
「誰が騙したって?」
「いや。なに。仕事の話だ」
「あっそう。これしかありませんから。自分で食べたいだけ食べてくださいね」
彼女はふんという。
そして、そこに座り込んだ。
「い、いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
三人はいそいそとチャーハンを皿に取り分けて食べ始める。
監視されているみたいで気が気ではなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 109