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小夜に電話が入ったのは、15時を過ぎた頃だった。
電話は美湖ちゃんが通う幼稚園からで、篠崎司法書士事務所にいた小夜は、驚きで椅子を蹴り飛ばした。
「きゃ!」
「ごめんなさい!」
椅子の音にびっくりした事務のおばさんに謝ってから、小泉園長先生との会話を再開した。
「じゃあ、病院に運ばれたんですね?」
『らしいです。』
いつもの時間に迎えに来ないお母さんへ、園が電話をしたそうだ。
その電話に出てくれた会社の人に事情を聞き、所在を知っている小夜へ連絡をしてくれたらしい。
「とにかく、美湖ちゃんを迎えに行きます!」
『そうして頂けると助かります。事情が分かりましたら教えて頂けませんか?』
「もちろんです!」
どういう状態か分からない。
お母さんの様子が気になった。
「おじさん、ごめんなさい!」
「行ってきなさい。」
何も理由は聞かず、送り出してくれた。
「小夜ちゃん、困ったことがあったらすぐに連絡してね!」
「ありがとうございます!」
荷物を抱えて飛び出した。
風見さんへ電話をしながら駅へと向かう。
「仕事中、ごめんなさい!美湖ちゃんのお母さんが倒れたらしいんだ!」
『ええ!?』
すぐに電話に出てくれた風見さんへ、知っている情報を話した。
「いまから美湖ちゃんを幼稚園にお迎え行ってくる!」
『桜井さんの入院先は?』
「聞けてない!」
改札をピッと抜けた。
階段を駆け上がった。
『じゃあ、こっちから電話をしてみるよ!』
「ありがとう!」
ちょうど電車が入ってきた。
「切るね!」
美湖ちゃんには、お母さんしかいない。
お母さんの姉妹は、確か山口にいるんじゃなかったかな。
何事も無ければ良いけれど、不安で不安で仕方がなかった。
電車の中で足踏みしたい気分だった。
とにかく、美湖ちゃんをお迎えに行って、家で待機しなきゃ。
入院に必要なものって何だっけ?!
歯ブラシ、コップ、下着・・・!
あぁ、おれじゃ用意出来ない!!
ち、近くに住む女の人!!
駅から転げるように走って、はなれに駆け込んだ。
「女将さん!!」
「あら、どうしたの?」
天使に見えた。
事情を説明して、女将さんに数日分の下着を用意してもらうようにした。
「と、とにかく幼稚園に行ってきます!」
「気をつけるんだよ!」
「はい!」
汗だくだ。
それでも、ひとり残された美湖ちゃんのために、必死になって走った。
園に着いたら、笑顔で会わなきゃ!
お母さんのことも、はっきりしたら、ちゃんと話さないと!
園庭を走り抜け、大きく深呼吸して息を整えた。
「こんにちは!!美湖ちゃんをお迎えにきました!」
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