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14 2019年8月6日
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「え?」
父親からの急なお願いに、貴志は首を傾げた。
朝食のウインナーが、ころりと皿の上で転がった。
「それ、俺が行くの?」
「あぁ。貴志なら年齢も近いし相談に乗ってやれるだろう?」
俺の方が相談に乗ってもらいたいくらいの状態なのに、何の相談に乗れば良いんだろうか。
「えっと小夜くんが何か悩んでるって言ったの?」
「いや。だが、何か抱えているのかもしれない。」
夏休み中はアルバイトに来てくれるはずだった小夜くんが、何かの事情で来れなくなった。
東京に呼び寄せた責任があるのか、父親は小夜くんのことを酷く心配していた。
恋人の風見さんが絡んでいるんじゃないかと気にしていたけれど、多分、あのふたりなら大丈夫だと思う。
「うーん。じゃあ、仕事帰りに寄ってみるよ。」
そう約束して、貴志は仕事に出掛けた。
------------※ ※ ※------------
正直なところ、自分の頭の中はトオルさんのことでいっぱいいっぱいだ。
メッセージのやり取りをする度にドキドキするし、返事が無かったら気持ちが落ちる。
まるでジェットコースターに乗っているかのように、気分が上下して、息苦しかった。
ピロン。
『急なんだけど、週末に帰国することになった。10日って空いてたりする?』
あぁ、神様!
貴志は泣きそうになった。
『空いていますよ。ビアガーデン予約しますね。』
震える指で返信すると、すぐに返ってきた。
『いや、その美味い居酒屋に行きたい。』
はなれの事だ。
些細な約束を覚えていてくれて、貴志は天にも昇りそうなほど嬉しかった。
『分かりました!予約しますね!』
思わず顔を覆った。
嬉しすぎて、泣きそうだったからだ。
「篠崎さん、体調悪いの?」
会社の隣の席の女の子から声を掛けられてハッとした。
「いや、寝不足。ゲームのし過ぎかも。」
「なぁんだ。」
危なかった。
素の自分が出てた。
貴志は席を立つと、トイレに篭った。
トオルさんからの飲みの誘いが嬉しすぎて、しばらくはポーカーフェイスを作れそうもなかった。
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