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振り返ると、昔の常連さんが立っていた。
「山P、いらっしゃい。」
ママが嬉しそうに歓迎した。
「そこ、俺の席。」
悠が座っていた席に無理やり陣取ると、俺の肩に手を回した。
「久しぶり、タカ。」
ホッと肩の力が抜けた。
悠は舌打ちをして、遠くの席に座った。
「大丈夫か、悠から迫られてるって想像もしてなかったよ。」
「うん。ちょっとびっくりした。」
本当にびっくりして、怖かった。
このまま何処かに連れて行かれるかと思った。
「ママ、聞いた?この前のキャンプ場の話。」
ママが吹き出した。
「山Pったら、カウパボを救おうとしてたんだって?」
「参ったよ。」
すずくんと、ママのお兄さんと恋人、それから別のパートナー2組で、ひっちゃかめっちゃかな夜を過ごしたそうだ。
「ええ?嘘でしょ?」
「本当。光太郎にやられたよ。」
声を上げて笑った。
悠の事が怖かったけど、それすら忘れてしまうほど、そのドタバタ劇は凄かった。
「アハハ、その人たちと会ってみたい!」
「もー、大変だぞ?ポッポー!ポッポ、ポッポーッ!」
涙が出ちゃうくらい、おかしい。
お腹が捩れそうだった。
「ま、だからな。人生いろんな事があって、殻に閉じこもったらツマンナイって話。・・・悠は、多分、本気でタカの事を好きになっているみたいだし、タカが嫌じゃなければ付き合ってみても案外楽しいのかもしれねぇよ。」
ドキッとした。
「それとも、気になる人がいたりする?」
覗き込むように見つめられた。
「・・・いる。」
頭を撫でられた。
「じゃあ、ソイツにぶつかってこいよ。殻にこもってちゃ、何にもならない。」
「うん。」
ドキドキする。
土曜日に、会う予定なんだ。
「じゃあ、そろそろ出るけど、タカも帰るか?」
「うん、帰る。」
お勘定を済ませて、ふたりで立ち上がった。
悠が見てるのを感じたけど、振り向けなかった。
だって、トオルさんのこと好きなんだもん。
土曜日、頑張るって決めたから。
「またね、タカ。」
店を出て、タカから貴志へ気持ちのスイッチを切り替えた。
山Pと駅まで一緒に歩いて別れた。
そう、頑張る。
俺、頑張ってみる。
携帯を取り出して、トオルへとメッセージを送った。
時差1時間の国、シンガポール。
すぐに既読になった。
『土曜日、すごく楽しみにしています。到着は何時ですか?お迎えに行きます。』
『実は前日の夜に戻るんだ。良ければ昼間から遊ばないか?』
あぁ、神様!!
『ぜひ!』
嬉しい、嬉しい、嬉しい!
誘ってくれた。
『俺、どこにでも行きます!』
その文面を見て、トオルは吹き出した。
ころころした犬を思い浮かべたからだ。
可愛いなぁ。
『じゃあ、11時に待ち合わせをしよう。』
『はい!』
懐いてくれて、嬉しい。
思わず頬が緩んだ。
『待ち合わせは、』
ふと思い立った。
『ハチ公前ね。』
『はい!』
貴志と並んでハチ公と写真を撮ろうと、柄にもなく思いついたのだ。
楽しみが出来た。
トオルはご機嫌で、会社の椅子に座ったまま背伸びをした。
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