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さっきから、このばかたれは「ワォン!」としか反応しない。(番外編 忍。参照)
風見は大吾のちょこちょことした足取りに合わせてカニ歩きをしながら、眉間を揉んだ。
これは、危ない。
十中八九、自信満々の迷子だ。
風見は、意を決してサイツカンパニーへ電話をした。
「ライム・ビジネスソリューションの風見と申します。財津様はいらっしゃいますか?」
『あいにく席を外しております。戻りましたらご連絡差し上げるように致しましょうか。』
是非ッ!!
力強く頷いた。
「携帯に至急ご連絡頂きたいとお伝えください。」
『かしこまりました。』
念のため、携帯に着信を入れた。
「大吾くん、どこに行くの。」
「ワォン!」
この、阿呆め。
風見が日本語の通じないイライラを募らせていた頃、財津家は大騒ぎだった。
『あなた!大吾がいないの!!』
「ええ?隠れんぼしているんじゃないのか?」
『居ないって、言ってるでしょ!!』
ギャア!!と電話で叫ばれた。
「そんなことを言ったって、その辺にいるだろう?」
『居ないから言ってるの!!』
妻の言う話では、ほんの少し目を離した隙に脱走したらしい。お気に入りの、土曜の朝から放送されるヒーローのクツがないらしい。
『なぜか、地球儀もないの!!』
「自慢しに、お友だちの家に行ったのかな。」
片っ端から電話をして、家に来たら確保するようお願いしたと言う。
『おとなりの奥さんが、お兄ちゃんが迎えに来たって話したらしいんだけど、光太郎さんは知らないそうなの!』
ええ?!
お兄ちゃんって、じゃあ誰のことだ?
財津は廊下の端で携帯を握り締めながら、考えた。
もしや、山下さんのことか?!
「ちょっと心当たりに電話してみるから、お前は周辺を確認していてくれ。」
『分かったわ!』
電話を切ると、風見さんから着信が入っていた。
無視して、山下さんへ電話を掛けた。
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