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おそらく同じ年齢くらいだと思うが、男の子の方が幼く見える。どうしても女の子の方が体格も言葉も達者だ。
「さくらい みこです。」
「だいご・・・です。」
それでも、大吾くんは女の子の前で泣きベソはかけないと思ったのか、涙を溢すのを踏ん張った。
「だいごくん、ジュースのも?」
「うん。」
ふたりを挟んで俺たちは座った。
「大吾くん。ひとりでここまで来たの?」
「うん、にぃちゃに、あいにきた。」
小夜のおかげでワォン!以外の言葉を発するようになった大吾くんは、得意げに胸をそらした。
小夜はなんとも言えない顔になったあと、大吾を覗き込んだ。
「光太郎くんが新宿にいると思ったの?」
こくんと頷く頭を風見は撫でた。
「ちず。」
「地図?」
思わずテーブルに置いた地球儀を見た。
「にぃちゃ、ここにいるの。」
指差したのは、日本の首都 Tokyo 。
並外れた縮尺の地図に、小夜も苦笑した。
「みどりのでんしゃにのった!」
どう考えても、山手線のことだ。
よく無事で辿り着いた。
そして、途中で不安に襲われないあたり、なかなか肝っ玉の座った男の子だと思った。
「なるほど、大吾くんは冒険したんだね?」
「うん!」
ポケットの食料とスプーンを見せてもらった。
小夜と美湖ちゃんが大吾の相手をしている中、風見の携帯が震えた。
見ると財津様だ。
ようやくの折り返しに、風見は痛むこめかみを撫でながら電話に出た。
『風見さん!』
「大吾くんでしょう?」
噛みつくような勢いの財津様の電話に、やや苦笑しながら答えた。
『側にいるのか?!』
「います、ジュースを飲ませて座らせてますよ。」
はぁぁぁぁ・・・。
力の籠もった嘆息だった。
『迎えにきたお兄ちゃんって、風見さんの事だったのか。』
聞き捨てならない発言に、風見は片眉を吊り上げた。
「え?なんですか、それ。」
『大吾を迎えに来たお兄ちゃんがいるとお隣の奥さんの証言がある。』
んんー?
『どういうつもりか分からないが、大吾を返してくれ。』
ズキリとこめかみが痛んだ。
風見は、誘拐したと疑われていた。
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