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56 2019年8月9日
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この日は、長崎出身の人にとっては大切な日だ。
他県がどうしているのかわからないけれど、8月9日は、夏休み中の小学生も中学生も登校日だった。
長崎原爆投下の日。
午前11時2分。
働く人も、学生も、手を止めて黙祷を捧げる。
原爆投下の影響は、未だなお続いている。
高齢になり、被曝した人たちは少なくなってきたけれど、病に苦しむ人は多い。
平和公園は、投下されたとされる中心部にモニュメントを建てているが、近年の調査ではもっと北寄りだったとする説もあった。
小夜は美湖ちゃんと、その時間、黙祷を捧げた。
戦争は悲劇しか生まない。
もちろん、一面では経済が回るという面もある。
だが、それは一部の人間で、悲しい思いをするのは弱者だ。
日本が仕掛けた戦争は、深い傷をもたらした。
そして、きっと最前線で戦っていたアメリカ軍の人たちも、同じだけ辛い思いをしてきたと思う。
「美湖ちゃん、むかしね。」
小夜は戦争を知らない。
だけど、戦争は悲しみを生むことは、次の世代に伝える必要があると思っていた。
「大切な人たちが、たくさん苦しい目にあったんだよ。」
「くるしい?」
「うん。お腹すいてもご飯が食べれなかったり、大好きな人が突然、国同士の喧嘩に行きなさいって言われて、帰って来れなくなったり。」
まだ美湖ちゃんには、早いと思う。
だけど、伝えたかった。
「くにって?」
「海の向こうの遠いところ。」
「かえってこれないの?」
「そうだよ。」
異国の地で果てた人、海の藻屑と消えた人。
悲しい、悲しい、日本の歴史。
占領した側は、モラルを持った支配をした隊と、現地の人に酷い事をした隊があった。
もちろん、こういった事は、各国の占領した側の国で起きている。
慰安婦問題は、韓国と日本に深く横たわる問題だ。
そういう韓国も、同じ歴史を繰り返しており、ベトナムには未だに悲しみにくれる人も多い。
戦争は、悲しみしか生まない。
おれたちは、きちんとした事実を学び、戦争をしてはならないと後世に残す必要があった。
「喧嘩のない世界が幸せだね。」
「うん!」
小夜は美湖ちゃんを抱きしめると、戦争のない世界になるよう、心から祈った。
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