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トオルは、ソワソワしながら遠くから歩いてくる貴志の姿を見つけて微笑んだ。
時折立ち止まっては、髪を撫でつけ、服を伸ばし、ショウウィンドウに写る自分の姿を確認しながら、ゆっくりと歩いてくる。
11時15分前。
まだ時間ではないから、ハチ公の見える近くの日陰で待っていたら、可愛い姿を見せながら歩いてくる貴志が見えたのだ。
・・・可愛いな。
相変わらずの賑わいの渋谷駅前の広場。
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる若者の中で、貴志の姿はすぐに見つけた。
多分、楽しみにしてくれていたんだろう。
手を振ると、貴志のお尻から尻尾が見えるようだった。
ぶんぶんと喜びに振られる尻尾。
やっぱりハチ公前にしたのは正解だった。
「トオルさん!お元気でしたか?」
「もちろん。な、写真撮ろうぜ。」
ハチ公と一緒に撮りたかった。
一緒に写るために肩を引き寄せると、貴志の顔が真っ赤になった。
「ほら、笑って。」
頬を寄せるようにして撮ると、貴志から良い匂いがした。
カメラに、はにかんだ笑顔を見せた貴志の写真を共有して、トオルは改めて挨拶した。
「今日はありがとう。夜まで付き合ってもらってありがとうな。」
「う、ううん。嬉しかったから。」
頭を撫でると、柔らかな髪だった。
トオルは、何だか新鮮な気持ちになった。
おずおずと見上げてくるその目に憧れが含まれているのを感じて、こそばゆい気持ちになったのだ。
「えっと、今日はどこに行きますか?」
ちょっとだけ困った顔をしながら、撫でられた髪を整える貴志は、文句なしに可愛い。
貴志はノーマルだろうから、このままお兄ちゃんキャラで甘えてもらうことを楽しもうと思った。
「そうだな、最近の流行とか全然分かんないんだけど。服、見ようかな。」
「洋服ですね。行きつけとか、あるんですか?」
あるわけが無い。
自分はそんなオシャレさんではないのだ。
「貴志の服、センスいいよね。どこで買ったの?」
「あ、えと、俺っ。」
褒められて焦る姿も可愛かった。
やっぱりこの子、可愛いな。
トオルは、なんだがウキウキしてきた。
この百面相をする貴志の事が気になって仕方がない。
「とりあえず、まわろっか。」
「はい!」
交差点を歩いて、目に入ったビルに飛び込んだ。
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