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真っ先に浮かんだ言葉は、しまった!という後悔の一言だった。
そりゃそうだ。
男から額をいきなり触られたら、ノンケはびっくりするだろう。
「ごめん、びっくりさせた。」
「う、ううん。」
真っ赤な顔で俯いた頭を見ながら、トオルはさっき購入したシャツを取り出した。
「これに着替えておいで。」
「・・・え?」
勘違いしそうだった。
貴志は俺のことを好きで、そして抱かれたいとアピールしているように見えてしまうのだ。
原因は分かっている。
濡れて肌が透けたエロいシャツと、ここのところ寂しい夜を過ごしている自分の欲求不満のせいだ。
「こ、れ、トオルさんの・・・。」
「貴志が風邪ひいちゃいそうで見てらんないの。良いから、着替えてきて。」
無理矢理トイレに押し込んだ。
それにしても・・・。
こじんまりとした、二階建ての美術館は美しかった。
中庭を配した美術館は、地下二階に噴水が設置されている。
見上げると、丸く空が切り取られて曇った空が揺れていた。石と、水と、ガラスで作られた、この建物自体が芸術作品だった。
その誰もいない美術館は、世界から切り離された静かな時間が流れていた。
「あの・・・。」
中庭を眺めていると、貴志から声を掛けられた。
振り返ると、頬を上気させた貴志が潤んだ目で見つめていた。
ああ、失敗した。
トオルは思った。
「可愛い。」
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