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「・・・電話、出て?」
鳴り止まない電話に、貴志はトオルへお願いした。
「ごめんね。」
そう断りを入れられて、彼はポケットから携帯を取り出した。
トオルさん、なんて言いたかったんだろう?
友だちでいよう?
友だちだよね?
ほんの少しだけ離れた距離に立つトオルに、何となく心の距離を感じて寂しくなった。
「あぁ、しんちゃんか。どうしたの?」
漏れ聞こえてくる声は、男性のものだ。
しんちゃんと呼ぶくらいなのだから、仲の良いお友だちなんだろうと思う。
「ん、そう。・・・シンガポールに帰るよ。エドワードに?・・・あぁ、無くはないけど。」
しんちゃん。
エドワード。
そして、シンガポール。
俺の知らない交友関係。
「分かった。何時くらいに仕事終わるの?・・・うん、良いよ、取りに行く。」
ちらりと視線を向けられた。
「けど、ご利益あるのかね?」
笑顔を向けてくれたけど、何となく邪魔者っぽく思えて、何も返せないまま俯いた。
しんちゃんさんと、会うんだ。
悲しくて、汚れた靴の爪先を見つめた。
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