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「お水のおかわりはいかがですか?」
もう!!
今日は一体何なんだ?!
告白しようとして邪魔が入ること三回目。
お店のぽやぽやした女の子が空になったコップを見てやってきた。
気が利いているのか利いていないのか!
「く!!ください!!」
貴志が真っ赤な顔で、店員さんにグラスを差し出した。
たぶん、間違いない。
貴志も、勘違いでなければ俺の事が気になってくれている、と思う。
「ね、貴志。」
「な、なに?」
真っ赤な顔をして、お水を飲んでいる貴志に微笑んだ。
「うっ・・・!!」
水を溢した。
おしぼりを渡しながら、確信した。
「俺ね、恋愛対象男性。貴志は?」
貴志が受け取り損ねて、おしぼりを落とした。
れんあいたいしょうだんせいたかしは。
れんあいたいしょうだんせいたかしは。
恋愛、対象?
「恋愛、対象って言ったの?」
「そう。」
恋愛対象、男性・・・。
貴志は、ゆっくりと頭の中で言葉を繰り返した。
俺も!
言おうとしたら、お店の女の子が新しいおしぼりを持ってきてくれた。
「テーブルも拭きますね。」
「す、すみません。」
謝りながら、貴志はトオルを見つめた。
俺も!
俺も!
俺も!
もしかしたらという気持ちが消えない。
期待と不安でいっぱいになった。
だって、恋愛対象が男性というだけだ。
俺の事を好きでいてくれているなんて、夢の話だと思う。
片思いのプロになりすぎて、貴志は自己否定が強かった。
それでも、優しい笑顔を向けてくれるトオルに、ほのかな期待をしてしまう。
ずっと片思いしかしたことがない。
自分が好きになった人は、いつも隣には女の子が立っていた。
今の会社に就職したのも、憧れていた先輩が働いていたから。
本当は、内勤の開発部が良かったけど、先輩が営業だったから営業を希望した。
でも、その先輩も異動で福島に行ってしまった。
・・・噂では、彼女を連れて行ったって聞いた。
ずっと空振りな気持ち。
このままひとりで一生を終わるんじゃないかと、頭のどこかで思っていた。
「貴志、出ようか。」
「うん。」
ふたりでお店を出た。
「俺のボスの恋人のところに寄るけど、いい?」
「えっと、ごーしちごーしちしちの人?」
「そう。」
ごーしちごーしちしちの人が、しんちゃんさん。
トオルさんが、可愛いって言っていた人だ。
貴志は胸がモヤモヤしながら、シャツの裾をギュッと握った。
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