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夏の日暮れ。
まだ熱気のこもる地面は暑いけれど、小夜はこの暑さは嫌いじゃなかった。
この暑さが去年、風見さんと出逢えた理由だからだ。
今では、可愛い美湖ちゃんも一緒に手を繋いで歩いている。
知らなかったこの街が、故郷とも思えるくらい深い繋がりが出来ている。
「こんばんは。」
顔見知りも増えて、挨拶を交わす。
これは、はなれでアルバイトをしたおかげだ。
「杉ちゃん、これからアルバイトかい?」
「いいえ。今日はお客さんで行くんです。」
「アハハ!そりゃ大将も喜ぶな!」
野菜屋さん、お肉屋さん、駄菓子屋さん。
いい匂いをいつも出しているお好み焼き屋さんに、焼き鳥屋さん。
可愛い看板猫がいる美容室。
風見さんと出逢えたから、知り合えた。
「こんばんは。」
「せんせ、こんばんは!」
茜ちゃんと茜ちゃんのお母さんが、すでにお店の前で待っていた。
「お待たせしました。」
「いいえ!」
穏やかな夕暮れ。
おれたちは微笑みあってから、お店へと入った。
------------※ ※ ※------------
貴志と無言で手を繋いで歩いた。
公園から居酒屋まで、ほんの少しだ。
まだ気持ちは聞けていないけれど、何となく甘酸っぱい空気が流れて幸せだった。
「こ、ここ。」
「ありがとう、入ろうか。」
のれんを潜ると、威勢の良い大将の声が響いた。
「らっしゃい!」
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