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俺の手に重ねてくれた温かい手。
愛情があると、トオルは、そう感じた。
「お、れね、トオルさんと全く逆で・・・。」
そう、逆だ。
深い愛情を両親から注いでもらった。
そして、片想いだけを続けてきた。
「誰とも付き合ったことがなくて、臆病で、卑屈。いつもバレるんじゃないかとびくびくしてた。」
このまま一生ひとりで生きていくんだって、そう思っていた。
「ひとりじゃ潰れそうで、苦しくて。」
重ねていた手をしっかりと握られた。
「そしたら、シャボン玉の王子様が現れたんだ。」
ふふ。
ベンチで、ため息を飛ばしてしまえって。
「そしたらね。」
トオルは、話の行方を必死で追った。
引っ込み思案な貴志が、勇気を出して話をしてくれている。
そこで、電話が鳴った。
「・・・俺だ。」
貴志の電話だった。
------------※ ※ ※------------
電話に出ない。
悠は、イライラと爪を噛んだ。
さっぱり電話してこないタカに、気が狂いそうだった。
この瞬間にでも、タカはあの野郎と一緒にいるような気がして、堪らなく腹がたった。
どこに居るんだよ!!
なぜ、執着してしまうのか分からない。
だけど、タカは俺のものだと思っていた。
Gesso(ゲッソ)のカウンターで拳を握り締めながら、悠はコール音を聞いていた。
『諦めなさい。』
昨日、chizooooのママから言われた。
『悠の気持ちは、タカには届かない。タカには好きな人がいるの。』
『何で?この俺が、連絡して来いって言ってんのに。』
『・・・もっと優しくしてあげて。』
嫌だ!
嫌だ、嫌だ、嫌だ!!
『悠はタカのことが好きなんでしょう?』
『決めつけんなッ!』
人なんて信用できない。
好きって気持ちは、とうに捨てた。
だから、タカのことは好きじゃない。
だけど、俺の側から消えるのはムカつくのだ。
『拗れてるんだから。』
人なんて、簡単に裏切るんだ。
知っているのだ。
いてもたっても居られなくなって、いつか見かけた公園に走った。
いるかもしれない、いないかもしれない。
それでも、黙ってコール音を聞くだけなんて嫌だった。
「店長?!」
「店番、頼んだ!」
タカは、俺の側が一番いいのだ。
あんなサラリーマンのどこが良いんだ?!
好きな気持ちを否定しながら、悠は走った。
『悠、素直になんなさい。』
chizooooのママの言葉を思い出しながら。
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