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自分の気持ちが分からない。
分かりたくない。
と言うか、分かっていた。
まだ暑いアスファルトを蹴りながら、汗だくで走る自分は滑稽(こっけい)だと知っていた。
好きだという気持ちを当て嵌めれば、楽なんだろうと思う。
ひとりで寝るベッドの冷たさや、生きるための作業でしかないひとりっきりで食べる食事は美味しくないことも、気がつけばタカのことを考えてしまう自分や、客として現れたサラリーマンの憎たらしさ。
全て、タカへの気持ちが向いていることを示す材料だって分かっている。
だけど、認めたくなかった。
この人だけだと、自分にはこの人しかいないと信じた相手は、あっさりと浮気して、自分を捨てた。
いや、最初から俺は浮気相手でしか無かったのかもしれない。
今でも心が血を流す思い出は、全て見ないふりをして生きてきた。
人は信用してはいけない。
こと恋愛に関しては、好きだという感情を捨てて、体の関係だけをしてきた。
あんな痛い思いなんてしたくない。
なのに!
タカがあのリーマンの腕の中にいると思ったら、ヒリヒリと胸が痛んだ。
掬ったはずの水が手のひらから溢れ落ちるように、彼の心を求める自分がいた。
苛立ち。
自分のものにならない、焦燥感。
すぐ近くにいたのに、何も出来ずに縮こまっている姿を見て安心していたのかもしれない。
いつの間にか、彼は違う男の胸の中におさまろうと動いていた。
酷い男だと自覚はある。
タカの目の前で、一晩限りの相手を漁った。
恋愛なんて、そんなのでメシは食えないと、嘲笑したことだってある。
そんな自分に、そもそもタカが惹かれるわけがないのだ!
だけど。
だけど、もしかしたら。
あの公園で、ひとりで泣いていたら、俺のもとへやってきてくれるかもしれない。
鳴らない俺の電話。
出てくれないタカの電話。
もし、やり直せるのであれば。
もし、タカと出逢いなおせるのであれば。
・・・恋愛なんて、夢見てるんじゃねぇよ。
そんな言葉は投げつけない。
そして、一夜の相手を目の前で漁ったりは、決してしない。
タカ!
タカ、どこにいる?!
夜の帳の降りた公園で、悠はふらふらとベンチに座り込んだ。
・・・誰もいない公園。
ここでも俺は、ひとりだった。
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