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「アハハ!晋作くん、可笑しい!」
楽しそうに公園の前の道を歩いていく若いカップル。
汗だくで肩を揺らしながら、俺は空虚な気持ちで、ただ見ていた。
泣いていたら、なんて意味のないことを・・・。
俺が?
彼が?
胸がヒリヒリ痛む。
ここに、彼らは座っていた。
時を置いて同じベンチに座って、俺は何をしているのだろう。
取ってくれない電話。
それでも掛けてしまう、醜い自分。
焦がれる気持ちに蓋をして、苛立ちをあらわに強く当たった罰だ。
額の汗がぽとりと地面に落ちた。
虚しく響くコール音に、泣きそうになった。
俺がここでひとりで泣くんだ。
たったひとりで、孤独に。
だらりと肩から力が抜けた。
結局、いつもそうなんだ。
目の前にあった幸せを、自分で消してしまう。
あの時、追いかければ良かったのか。
そして、タカに優しく笑いかければ良かったのか。
俺を捨てた、冷たい紫の瞳がまざまざと思い浮かんだ。
悲しくて、携帯を置いて顔を覆った。
タカは、もう手に届かない気がした。
------------※ ※ ※------------
「・・・電話、出なくていいの?」
「うん・・・。」
タカこと貴志は、震え続ける携帯をそっとポケットにしまった。
「トオルさん、お魚食べたいって言ってたよね。」
「ん。何があったかな。」
長い指がメニューをめくっていく。
その指から目が離せなかった。
・・・さっき、手を包んでくれた。
温かくて、優しくて、愛情で包み込んでくれるトオルさんの手は、俺の臆病な心を後押ししてくれた。
小夜くんや、風見さんとお店で会ったのは、縁だ。
俺の背中を押してくれるために、来てくれた。
そう勘違いしてみようと思った。
「あ、待って。しんちゃんが着いたみたいだ。」
震えた携帯を持って、トオルさんがウインクした。
ズキュンと胸を撃ち抜かれながら、貴志は息を整えた。
「入っておいで。」
俺たちは入り口に顔を向けた。
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