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その歪みはなんでしょう
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「悠ちゃん、今日も泊まりに来るよね?」
金曜日、放課後教室。
鞄に教科書やペンケースをしまい身支度をしている時に、幼なじみの松川 翔吾(まつかわ しょうご)が明るい声で話しかけてきた。
「ああ、行く」
俺、花山 悠(はなやま ゆう)は少し無愛想に答えた。だが、俺のその無愛想な返事に対して翔吾は嬉しそうに笑った。
俺と翔吾は幼なじみで、気づいたらいつも隣にいた。家が隣同士ということもあり、小学生の頃なんかは毎日お互いの家を行き来していた。なんというか、腐れ縁というか、切っても切れない縁ってやつだと思う。翔吾の両親は俺達が小学生の時に交通事故で亡くなった。その後中学卒業まで翔吾はおばあちゃんの家に住んでいたが、高校に入ってまたこっちの家に戻ってきて、今は広い一軒家に1人、という状態だった。そんな翔吾の状況を見て、俺たち花山家が更に翔吾に親密に関わる環境が出来た。いつのまにか、毎週金曜の夜から土曜日は俺が翔吾の家に泊まりに行って、家事が苦手な翔吾の代わりに掃除洗濯や料理をしてあげる、というのが習慣になっていた。まぁ、俺は俺で翔吾といる時間は嫌いじゃなかったから、不満は無かった。
学校を出て、2人で家までの道のりを歩きながらスーパーに寄った。
「おい、翔吾。今日はどうする」
この言葉で十分翔吾には伝わる。
「ん〜そうだなあ、オムライス食べたい!」
翔吾はあまり悩まずに早々とそう答えた。
「お前、いつもそれじゃないか、たまには他のでもいいんじゃないのか」
「だって、悠ちゃんの作るオムライス好きなんだもん」
「そうか」
「うん!」
オムライスに必要な食材を買ってスーパーを出た。
「悠ちゃん、それ俺持つよ」
食材の入った袋を指さして翔吾が言った。
「いや、いい。これくらい自分で持てる」
「いいから!これからお世話になるからこれぐらいやらせて!」
「分かった」
ビニール袋を翔吾に手渡して、また歩き始めた。会話、と言ってもほとんど翔吾の一人語りだが、そんなことをしているうちにあっという間に翔吾の家に辿り着いた。翔吾の家の奥に行けば自分の家なのに、その自分の家の手前が帰る場所、なんて少し変な感じだな。
「さあ、入って入って」
入り慣れた玄関に通されると、翔吾の家の匂いがした。靴箱の所には翔吾がまだ小学生の頃の家族写真が置かれている。いつ見てもその写真の翔吾のお父さんとお母さんは温かい表情で笑っていた。翔吾が当時たくさんの愛を注がれて育っていたのがよく分かる1枚だった。翔吾はお母さんに似てとても綺麗な顔をしていた。色素の薄い瞳と少し垂れた二重の優しい目をしていて、色白、筋の通った鼻、俺が言うのもあれだが、非の打ち所のない整った顔だと思う。身長も高くて、低いけど落ち着く声だし、笑顔も可愛らしい。モテるんだろうなあ…。
そんなことを考えながら翔吾をじっと見つめていた。
「悠ちゃん?どうしたの?」
翔吾は首をかしげこちらを見つめる。
「いや、なんでもない」
俺は靴を脱いで松川家に入っていった。
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