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年齢不詳な吾久
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「遊んでく?」
右手の人差し指と親指で輪を作り、その中に左手の人差し指を出し入れする吾久。
暗城家が管理している風俗で遊んでいくかという誘いだ。
ニヤリとした笑みを浮かべる吾久に、俺は冷めた瞳を向ける。
「困ってねぇよ」
予想通りの俺の返答に、吾久は、あははっと楽しそうな笑い声を立てた。
「だよなー」
口許は俺と同じ灰色のマスクで隠されているが、細められた瞳と高らかな笑い声に、吾久の楽観的な性格が溢れ出る。
治験のために必要な検体が足りなくなり、吾久が理事を務める病院を訪れていた。
霙が居なくなっているコトに気づいてから、3ヶ月程、月日が過ぎていた。
4ヶ月前に会った時には、オレンジ色のショートボブだった吾久の頭は、銀色の短髪に変わっていた。
「また、髪型変えたのか? 禿げるぞ?」
20代の前半だと言っても通じるような童顔とシャープな体躯だが、吾久は既に33歳だ。
そろそろ落ち着いてもいい歳だろう。
「俺は、禿げねぇし。毛量多いし、ふっさふさだから、なんも心配ねぇよ」
ケラケラと笑う吾久の瞳が、俺の頭から爪先までを舐めた。
「お前は、相変わらず陰気臭い格好してるよなぁ……」
眉間に皺を寄せ、怪訝そうな顔をした吾久は、首から下げていたカードキーを翳し、隔離病棟へと続く扉を開けた。
伸ばしっぱなしで、瞳すら覆い隠していた髪は、専務就任に伴い軽く後ろへと流す程度に整えるようにはなったが、服は真っ黒な装いのままだ。
さらに、【遮断マスク】に革手袋。
霙に出会ってから、自分の穢い部分を隠すように、革手袋をつけるコトが習慣になっていた。
殺風景な身形に、周りに無関心な俺の性格を、吾久は面白味がないといつも顔を顰めた。
薄暗い廊下には、一定の距離感で幾つもの扉が並ぶ。
塗装されていな鉄の扉は、外側から見るだけでも、圧迫感を与える。
ちょうど目線の高さにある小窓にも、鉄格子が嵌められている。
まるで、刑務所の独房のような様相だ。
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