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辛気臭い場所
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ぼんやりと宙を見上げる者や、床の上に寝転がる者、ベッドの上で膝を抱える者、俺たちに敵意剥き出しの瞳を向ける者。
中に居る者の反応は、様々だ。
彼らの足首には、真っ黒なアンクレットがつけられている。
それは、黒羽家で使用している物と同じ機能を有している。
照度の低い蛍光灯に、薄暗く淀んだ空気が身体に纏わる。
「いつ来ても、嫌な空気だな……」
何度訪れても、不快にしか感じないこの場所に、眉を潜めた。
「文句言うなら、貸さないぞ?」
むすっとした音を放った吾久は、言葉を繋ぐ。
「そろそろ“切り取り”始めようと思ってたの何体かあるから、無償で貸してやろうと思ってたんだけどなぁ」
嫌味ったらしく紡がれる声に、俺は、被せるように言葉を返した。
「いくらだ?」
あっさりと金額の提示を求める俺に、肩を透かされた吾久は、チッと舌を鳴らした。
「面白くねぇなぁ……。別に、タダでいいよ。多少、壊れようが中身が使えれば問題ねぇし」
薄暗い隔離病棟を奥へと向かって進む。
「んで? どんなの希望なの?」
数歩前を歩いていた吾久は、頭の後ろで手を組んだままに俺を振り返り、流すように瞳を向けた。
「射精する個体」
首を傾げる吾久に、俺は言葉を足す。
「精子を殺す薬の実験だから」
その薬は、接種後の数ヶ月、無精子状態となる。
煽られセックスをしたとしても、子種が死滅していれば、妊娠に至るコトはない。
どちらかというと、αに便宜を図るものだ。
「ふーん」
興味なさげな音を放った吾久は、病棟の中央部分にある部屋の扉を開けた。
パソコンが1台、事務机に乗せられているだけの簡素な部屋だ。
吾久は、首からぶら下げていたカードをリーダーに差し込み、パソコンを立ち上げた。
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