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嫌な音を立てる心臓
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タッチパネル式の画面をタップしながら、吾久は声を繋ぐ。
「さすがにαの人形(ドール)は居ねぇから、βかΩのオスだなぁ」
吾久は、自分の所有する奴隷を“人形”と呼んでいた。
それに倣うように俺も、暗城家所有のものは、“人形”と呼ぶようにしていた。
病院とは別棟にある隔離病棟。
隔離病棟とは名ばかりで、ここにいるのは感染症を患った者ではない。
ここに居るのは、暗城家に買われた人形たち。
人形たちの情報を管理しているデータが、この資料室にしかないために、ここで話しをするしかなかった。
「どれがいい?」
画面をこちらへと向けながら、声を放つ吾久。
そこには、名前と性別、年齢が羅列されていた。
瞳を向けた俺は、その名に瞳を止めた。
『8/ 白糸 霙 : しらいと みぞれ / ♂Ω / 24』
……みぞれ?
俺の心臓が嫌な音を立て、拍動する。
“霙”という名は、そうそうある名前じゃない。
「どした?」
画面を見詰めたまま動きを止める俺に、吾久は不審げな声を放った。
俺は、小さく首を横に振り、声を返す。
「いや……。この8番と13番…あと、15番…」
画面上に視線を滑らせながら、霙の他にも、適当な番号を選択していく。
吾久は、指定された番号をタップし印をつけていった。
「了解。2、3日中には、そっちに送るから」
「ぁあ。頼んだ」
俺は、手許にあるタブレットに人形が届く予定を書き込んだ。
「返したら直ぐ“切り取り”か?」
強調フォントで表示されている霙の名に瞳を止め、声だけを吾久へと向けた。
「そうだねー。置いといても維持費かかるだけだしね。……何で?」
吾久は、さも不思議そうに首を傾げながら俺を見やる。
「いや。この8番のΩなら、まだ若いし男娼として使えるんじゃないのか?」
言葉に、面倒そうに息を吐き出した吾久が口を開く。
「こいつ自体に逃げる気はないらしいんだけど、勝手に逃がそうとしたり、自分の物にしようとしたりするヤツがいてさ……もう、面倒だから、切り取って始末した方が早ぇなってなったわけよ」
画面を見詰めていた吾久の瞳が俺に向いた。
「そんなに、8番、気になる?」
「あぁ、いや……」
俺のどちらともつかない返答に、吾久は、首を傾げながらも、それ以上の追求はしてこなかった。
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