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人違いであってくれ
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大きめのバンから運び出される棺桶のような木箱。
眠らされた人形たちは、荷物のようにラボ本館の地下にある部屋へと運ばれる。
「8番だけ、別館に運んでくれ」
「はい」
俺の依頼に、声を返した暗城家の使いの者は、8番の箱を残し、手際よく人形を運び込んでいく。
4畳ほどの小さな部屋に1体ずつ運び込まれ、木箱から出され、ベッドへと置かれる。
8番は、霙の箱だ。
それだけは、別館の社員寮の一室へと運び込ませた。
中を確認し、霙でなければ、本館の地下へと戻せばいい。
木箱の蓋が開けられ、横抱きに抱え上げられた身体が、ベッドの上へと横たえられた。
ワンピースタイプの病衣を纏ったその姿に、俺は溜め息を吐く。
やっぱりだ……。
【遮断マスク】をしていても、頸に軽い痺れが走る。
あの頃より性能の上がった【遮断マスク】。
心こそ乱されないが、頸の痺れは、微かに残る。
腰ほどまであった髪は、短く切り揃えられていたが、間違いなく花屋で出会ったΩ…俺の[運命の番]だった。
よく見れば、左手の薬指にはめられていたリングも無くなっていた。
「以上になります。荷受けのサイン、頂けますか?」
差し出されたタブレットにサインを書き込み、暗城家の使いを帰した。
ベッド脇にあった丸椅子を引き、腰を下ろし、霙を見詰める。
愛おしい人と小さな花屋で働いている時は、幸せだったはずだ。
何がどうして、暗城家の人形になったのか、皆目見当がつかない。
何が、あった……?
ベッドの上で眠り続ける霙の頬に、手袋越しに触れる。
素手で、その頬に触れる勇気は、俺にはない。
触れられる感触に、霙の瞼がぴくりと震えた。
起きた人形たちは、大体、環境の変化に戸惑う。
霙も例外ではなかった。
ゆったりと瞼を押し上げた霙は、俺の顔を認識し、驚いたように何度となく瞳を瞬く。
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