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噤み飲み込む
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何が起きたのかわからない僕の瞳には、下から煽り見る翠之の顔が映る。
ネクタイを外した制服姿の翠之が、ベッドの横で仁王立ちしていた。
僕を見下ろす翠之の瞳は、怒りと蔑みと悔しさに塗れていた。
「……あき、の?」
絞り出した声が、震えた。
「大丈夫か?」
苛立ちを抑えるような低い声を放った翠之は、ゆったりとした動きで、僕に顔を近づける。
無遠慮な視線は、僕の胸元から足先までを走っていく。
肌蹴たシャツに、何も纏わない下肢。
慌てた僕は、薄っぺらなダウンケットを手繰り寄せ、今更ながら下肢を隠した。
「……りょこ」
「行くわけないでしょ。お前が居ない場所になんて行く意味ないから」
修学旅行中じゃないのかと問おうと絞り出した僕の言葉に、翠之は声を被せた。
焦りと不安の入り交じる瞳で翠之を見詰める。
捨てられる……そう、思った。
この現状では、言い訳も、釈明も意味をなさない。
自業自得だ……、僕はまた、好きな人を傷付けたんだ。
傷つけたい訳じゃない。
だけど、堪らない不安が欲情を煽り、後先が考えられなくなった。
肉欲に誘われるままに、この身を快楽に沈めようとした。
翠之の気持ちを、蔑ろにして。
翠之を傷つけ、快楽を貪ろうとした……。
「あいつがちゃんと霙のコト守れるか確認しようと思ったんだけど、…油断も隙もないね」
翠之の瞳が、床に転がる倉島に向く。
「ぼ、僕が……」
―― パシンッ
破裂音と共に、僕の頬が熱くなる。
ジンジンとした痛みに、頬を押さえ、翠之を見上げた。
「なにも聞いてないし、なにも見てない。霙は無理矢理襲われたんだよな?」
じろりと僕を睨みつけた翠之の瞳に、身体が竦む。
「何も言うな。お前は被害者面してればいいんだよ。…オレに嫌われたくないでしょ?」
問われる言葉に、僕は口を噤んだ。
謝罪の言葉も、言い訳も、僕は飲み込む。
黙っていれば、僕は被害者になれる……。
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