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好きな人の傍に
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言葉に詰まり大人しくなる倉島に、翠之は僕を振り返る。
狂気染みた翠之の雰囲気に、恐怖が心を染める。
反面で、オスの色香を纏う姿に、腰が震えた。
熱くなる身体をどうにかしたくて、助けを求めるように、僕は翠之に手を伸ばす。
「薬…、効かなくなってきたかな」
シャッと音を立て、カーテンが引かれた。
カーテンで遮断され、倉島の姿が見えなくなる。
「ごめんね……」
僕の赤くなる頬に手を添えた翠之は、申し訳なさそうに擦る。
僕は黙ったままに、首を横に振るった。
翠之の視線が怖くなり、カーテン越しに倉島に瞳を向けた。
そんな僕の仕草に、翠之は喉奥で笑った。
「あんな、下半身露出状態じゃ、どこにもいけないだろうね。あいつのお仕置きは後で、…ね」
僕の視線に自分だけが打(ぶ)たれたのが不満だと訴えられたと思った翠之は、優しく頭を撫でる。
そのまま僕の髪の一房を摘まみ、さらさらと流した。
「オレ、霙の髪…好きなんだよね」
瞳を細め、笑みを浮かべる翠之。
純粋に好ましいと告げられているのに、ぞわりとする寒気が背を撫でていった。
「オレのために髪、伸ばしてよ」
そのくらい造作ない。
そんな簡単なコトで、僕のつけた翠之の傷が癒えるというのなら、喜んで髪を伸ばす。
「伸ばしたら…、好きでいてくれる?」
僕の問いかけに、翠之の笑みは深くなる。
翠之の気持ちを、繋ぎ止めておきたかった。
守ってもらうためではなく、好きになった翠之の傍に居たかった。
「啼かないでね? あいつに聞かせたくないからさ」
翠之の手が、露になる僕の素肌の上を滑っていく。
触れられた場所から、身体中を巡る血が沸騰していく。
「んんっ………」
啼くなと命じられた僕は、喘ぐ音を我慢する。
「イイコ……」
火照る身体と逸る心。
欲しくて、欲しくて、堪らなくなる。
身体を這いずる熱を下げたくて、倉島にすら縋ろうとした、はしたない僕。
それでも翠之は、僕を捨てずにいてくれた。
剰え、翠之の言葉に従おうとする僕を、イイコだと誉めてくれる。
僕には、翠之しかいない。
βの翠之は、僕の[運命の番]ではない。
でも、僕は[運命の番]など要らない。
運命などという目に見えないものに、翻弄されたくはない。
この目で見て、この手で触れて、温かく包んでくれる存在に、僕は惚れた……。
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