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不定防止のペアリング
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僕を大事にしてくれる、愛してくれる翠之と将来を誓い合えるのは、嬉しい。
……嬉しいはずなのに。
幸せな色に染まる僕の心の角が、不安に黒く淀んでいく。
家族を捨てた、母の姿が脳裏を過る。
好きな相手を傷つけるだけだと言う父の声が耳に蘇る。
翠之は、[運命の番]でもなければ、αでもない。
いつか、僕は翠之を裏切ってしまうかもしれない……。
それに。
「僕…、翠之のご両親にも会ったコトないよね……」
浮かれた気持ちが、すとんと地面に落下する。
番になるコトとは別で、同性でも子を成せるのならば、婚姻関係を結ぶことは可能だ。
でも、まだ学生の翠之は、その権利を有してはいない。
何をするにも、親の承諾が必要なのだ。
訝しげに眉根を寄せた翠之は、僕の表情に言いたいコトを察した。
「プロポーズだと思った?」
呆れるような音を放った翠之は、言葉を繋ぐ。
「あんな紙切れの約束がなくたって、霙はオレのものでしょ」
悄気ている僕に、翠之は面白くなさそうに言葉を紡ぐ。
「これは、虫除け兼…、お前の不貞防止」
僕の左手薬指のリングに触れた翠之は、満足げな笑みを湛える。
「ペアリングが傍にないときに、霙に発情の兆しがあると、電流が流れる仕組みになってる。霙のオレへの忠誠の証……」
挑発するような瞳で僕を見やった翠之は、恭しく左手を持ち上げ、リングにキスをした。
翠之が高校に通っていた1年間は、週末と僕の休日くらいだったが、大学に進学してからは、ほぼ家に入り浸っていた。
僕の職場である花屋にも、ついてくるようになり、アルバイトを始め、店長とも親しくなっていった。
ほとんど行っていなかった大学は、当たり前だが留年した。
留年が決まった翠之は、ますます大学へ行かなくなり、四六時中、僕と一緒に居るようになった。
翌年の夏。
翠之は、大学を辞め、僕の職場である花屋を手に入れた。
元の店長である女性から譲り受けたと、僕は聞いていた。
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