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瞳の奥に焼きついた
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突然の衝撃と痛みに男の握力が弛み、オレの顔が解放された。
逃げようとしていたオレの身体は、バランスを崩し、尻餅をつく。
「………っ」
オレから離れた手で鼻先を押さえた男は、掌の出所へと瞳を向けた。
男の顔を叩いた彼は、地面に落ちている小さな袋を拾い上げる。
「……このっ」
顔を叩かれ、苛立った男が拳を振るう。
ひゅんっと風を切る音がするものの、軽く身体を捻っただけの彼の髪をかするコトもなく、空気を殴る。
顔の横を通り過ぎていった拳を掴んだ彼は、男の身体を地面に沈めた。
「ぃっ………」
ぎりぎりと捻り上げられる腕に、男が悲鳴を上げた。
「こんな粗悪品をうちの物だと言って欲しくないね」
腕を捻り上げられながら、地面にうつ伏せに横たわる男。
その背に片足を乗せた彼は、身体を屈め、呻く顔の前にビニール袋を揺らして見せる。
長めの真っ黒な髪の隙間から見えた切れ長の瞳が弧を描く。
くいっと三日月を描く唇は、笑うというよりほくそ笑むという言葉の方がしくっりくる。
ぞわっとした感覚が、背を撫でていった。
真っ黒なスーツに濃いグレーのYシャツ、艶やかな黒の革靴は、噂の人物であろうコトを物語る。
マジで、イケメン………。
片手で簡単に男を伸してしまうその姿に、見惚れていた。
写真を撮るコトなど、すっかり忘れていた。
でも、瞳の奥にその姿が焼きついた。
俗に言う、一目惚れというやつだった。
一目惚れと言っても、それは恋愛感情ではなくて。
男としての憧れ。
オレは、その頃も今も、人に恋しいという感覚を抱けない。
たぶん、恋愛不適合者なんだ……。
その後、男が言っていた“黒羽製薬”という名を調べた。
表向きは、有名な製薬会社。
でも、裏で汚い仕事をしているコトも、周知の事実。
この頃はまだ帝斗は専務取締役という肩書きは持っておらず、専ら裏の仕事をしているらしかった。
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