アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
駒野なら <Side 帝斗
-
治験場所である本館の地下に足を踏み入れる。
自由が利かない自分の立ち位置では、霙の面倒は見られない。
霙の傍に居たいのは山々だが、会社の仕事をこなしつつとなると、無理がある。
地下に着き、ざっと周りを見回した。
大部屋から盗み見るように、こちらへと視線を向けている駒野の姿が目に留まった。
4年前に入社し、3年前にはアンクレットが欲しいと自分を売りに来た。
自分で自分を売り捌くヤツは初めてで、妙に印象に残っていた。
「なんでアンクレットなんて欲しがるんだ? 黒羽家の所有物になれば、人の尊厳など失くなるぞ?」
駒野の意味不明な提案に、俺は眉根を寄せた。
「社員でいても帝斗さんには近づけません。オレ……少しでも帝斗さんの傍に行きたい、です。人として見られてなくても、帝斗さんの力になれるならオレは嬉しい、…です」
強情るような瞳を向ける駒野に、俺の眉間の皺は深くなる。
「……俺に抱かれたいのか? “愛されたい”とでも?」
訝しげに放つ俺の言葉に、吃驚したように瞳を開いた駒野は、慌て口を開いた。
「め、めめっ滅相もないっ」
顔の前で、ぶんぶんと両手を振るい全力で否定した駒野は、ぼそりと言葉を足す。
「畏れ多すぎて、オレ……死ぬ」
両手で顔を覆い、ジタバタとその場で足踏みをした駒野は、オーバーヒートしたように、頭から煙を吐く勢いで、その場に蹲った。
一種の憧れなのだろうと認識した。
αの俺に、βである駒野が憧憬の気持ちを持つのは、何ら不思議はなかった。
「……わかった。買ってやるよ、お前のコト。ただ、高値はつけられないぞ」
一般的なβの駒野は、さほど高くは買い取れない。
冷めた瞳を向ける俺に、駒野は真っ赤になった顔のままに、ぶんぶんと頭を縦に振る。
会社に悪影響のある存在でもない駒野を“リサイクル”や“切り取り”に回すつもりはなかった。
だが、買い取ったからには遊ばせておくわけにもいかない。
駒野の身体調査でわかったコトは、家事が壊滅的だという事実。
ただ、身体自体は健康そのものだったので、治験要員として使うコトにした。
駒野を呼び寄せ、霙の世話を言いつけた。
治験を中断させようとしたが、駒野は、問題ないと続行を望んだ。
βで俺を崇拝している駒野なら、Ωのフェロモンの影響を受けないのではないかと考えた。
大事な存在だと伝えなくとも、空気を読むコトに長けている駒野なら、何となくでも俺の思いは伝わっている。
たとえ誘惑されたとしても、本能よりも理性が勝り、断るだろう。
俺のために尽くそうとする姿に、その頭に手を乗せ誉めてやる。
瞬間的に、感動に打ち震えたような顔を見せたが、30分後に霙を専務室まで連れてくるように伝えれば、しっかりとした瞳で俺に頷いて見せた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
52 / 116