アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
手中に収めた命
-
「俺の息子さぁ~、Ωらしいんだよ~」
面倒そうなのに、どこか惚気を孕む声色に、俺は驚きを隠しきれない。
「お前、子供なんていたのか?」
「もう、13よ。俺が、20歳の時のコだから……」
吾久は、思い出したように、はぁっとあからさまな溜め息を吐いて見せる。
「あの頃の“鎮静剤”、かなりタイムラグあったろ?」
吾久が服用していたのは、“鎮静剤”が、やっと形になってきた頃のものだ。
13年も前の薬の性能を、今さら責められるとは思いもよらなかった。
机の上に乱雑に置かれた薬瓶の中から“鎮静剤”の瓶を手に取った。
この後、霙をここへと呼んでいる。
今のうちに服用しておくべきだと、手の中へと転がし出した。
「あぁ。でも、今のは5分も経たずに効くぞ」
多少の憤りを感じ、言葉に苛立ちが籠る。
「知ってるよ。別に責めてる訳じゃねぇんだって。あの頃、タイムラグの計算ミスって、家の手伝いしてっときに、がっつり煽られて、ガキ作っちゃったんだよ」
オレが悪ぃの…、と吾久は、やるせなさを滲ませた。
吾久の話を聞きながら、“鎮静剤”を口に含ませ、そのまま飲み込んだ。
「母親の方は、“切り取って”売っちゃったからもういねぇし……」
吾久は、はぁっと面倒そうに、再びの溜め息を吐いた。
「…お前のコトだから、子供も、そのうち“切り取る”んじゃないのか?」
“切り取り”捌くなら、【防散スカーフ】など不要だろうと、吾久に問う。
「いや、流石にね。ガキはガキで、“切り取る”なり、泡に沈めるなりで使い道があるだろって産ませたんだけどさ。…可愛くなっちゃって、無理」
あははっと声を立てて笑った吾久は、これが情ってヤツなのかね? と、冗談めかした言葉を繋いだ。
平気で人を捌き、臓器を売り払う吾久にも人の心があったのかと、可笑しく思えた。
思わず、ふっと鼻から息が漏れた。
「なに笑ってんだよ」
じとっとした雰囲気を纏う言葉が、耳に届く。
「いや。お前も、人だったんだと思ってな」
ぼそりと放つ俺の言葉に、吾久は不満まみれの声を返した。
「あのなぁ。お前より、俺の方がよっぽど感情、豊かだかんな」
ケッと声を放った吾久に、わかってると適当な相槌を打ち、タブレットに表示されている在庫の1つを暗城家に送るように指示を出した。
そのまま操作を続け、1本だと言われた霙の代金を吾久の口座へと送った。
「金もスカーフも手配したぞ」
タブレットの操作を終え、すべてが完了したコトを吾久へと伝える。
「ぉお。相変わらず手際いいな。んじゃ、8番の解除キー送っとくわ」
アンクレットの鍵は、電磁波を発する小さな黒い箱だ。
色は違えど、同じ鬼城家製のアンクレットは、解除キーさえダウンロードできれば、こちらにある鍵でも、外すコトが出来る。
「あぁ。確かに」
吾久から送られてきた解除キーを確認し、取引を成立させた。
これで霙は、俺のものとなった。
自分の意思では捧げられないと宣った霙の命は、俺の手の中に収まった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 116