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僕の命など <Side 霙
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言われた通りに着替えを済ませ、足首の黒いアンクレットに指を這わせた。
帝斗の言葉が、耳に蘇る。
『あそこは、臓器を売り捌く場所だぞ?』
…知っていた。
でも、無意識に男を誑かし、人生を狂わせてしまう僕など生きていない方が良い。
僕の足を掴む黒い枷。
中学では、βの男たちに要らぬ傷を与え、高校では、佐久や常野、倉島の人生を狂わせた。
……そして、愛した翠之の人生も。
『くれよ……。捨てるくらいなら、俺にくれよ。お前の命』
自分に寄越せと言われ、掴まれた指先に、どくんと心臓がひとつ鳴った。
僕になど、構わなければいいのに。
このままでは、帝斗の人生さえも狂わせてしまう。
僕に合う抑制剤を作るという帝斗。
そんなものを作ったって、需要はない。
帝斗に利があるとは、思えない。
無駄な出資だ。
なんとか止めさせたくて、この命は自分のものじゃないからあげられないと、伝えた。
僕の言葉を、帝斗は嗤う。
金など、何の障害にもならない、と。
どうして帝斗は僕を生かそうとするんだろう。
生きていても、周りを傷つけるだけの存在の僕を……。
―― コンコンッ
部屋に響くノック音に瞳を向けた。
開かない扉に、再びノック音が響く。
「は、はい。どうぞ」
僕の返信を待っているのだと思い、返した声に、扉がゆるりと開く。
「失礼しまーす」
真っ黒な短髪に爽やかな顔立ちの男が、部屋に入ってきた。
デニムのウエスタンシャツに、カーキ色の七分丈ベーカーパンツ。
その足首には、まるで、見せびらかしているように、銀色のアンクレットが光っていた。
僕の足首についている黒色のアンクレットと色が違うだけで同じもののように見えた。
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