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黒羽製薬の社員寮
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僕を視界に捉えた男は、人当たり良い笑顔を浮かべ、言葉を繋いだ。
「霙さん、ですよね? 初めまして。オレ、駒野 幻っていいます。駒野でも、幻くんでも、かっちゃんでも、好きなように呼んでください」
すっと出された握手を求める手に、僕は恐る恐るそれを握った。
はっきりとした口調で、すらすらと紡がれた急な自己紹介に、軽く気後れする。
雰囲気に飲まれる僕に、駒野は小さく、んーと唸り、再び口を開く。
「よそよそしいの嫌なんで敬語抜きでもいいですか?」
「ぁ、…うん」
首を捻って見せる駒野に押されながらも、声を返した。
ベッドに腰掛けている僕に、駒野は側の丸椅子に座った。
「オレは、ここの従業員」
床を指し示す駒野に、僕の瞳は、足首のアンクレットに留まる。
僕の視線に気づいた駒野は、アンクレットの光る右足を持ち上げた。
「これは好きで着けてんの。帝斗さんに買ってもらったんだ……。オレは、帝斗さんの物…、所有物…っ」
ぶつぶつと言葉を零した駒野は、ニヤける口許を片手で覆い隠す。
ニヤニヤとするその顔に、きょとんとした瞳を向ける僕に、気持ちを建て直すように咳払いを1つした駒野は、言葉を繋ぐ。
「いつもは、管理しやすいようにって本館の地下の大部屋にいるんだけど、今日から隣の部屋になったから。なんかあったら壁叩いて」
自分の背後にある壁を親指で指し示す。
僕は了承の意で、軽く首を縦に振るった。
「えーっと。ご飯は3食、食堂でなんだけど、オレ、迎えに来るから、場所は心配しなくていいよ。あとは…」
駒野は、くるりと部屋の中を眺め、言葉を繋ぐ。
「ここ、社員寮なんだけど、水曜と土曜に“お手伝い”の研修中の人が、掃除と洗濯をしてくれるから家事はする必要ないんだ。汚れ物は、そこのクリーニングボックスね」
指し示されたの30センチ四方の生成り色の布製のボックスだ。
僕は、引っ掛かった駒野の言葉に、声を返した。
「社員寮?」
「そ。ここ、黒羽製薬の別館…専務の帝斗さんに従事してる職員の社員寮だよ」
道理で……。
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