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帝斗への信頼感
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部屋の中を見回す。
暗城家に買われたときの僕の部屋は、薄暗くパイプベッドに固いマットが敷かれただけの監獄のような場所だった。
ここは、まるで家具付きの賃貸物件のような装いだ。
一通りの家具が揃い、テレビまで設置され、終いには、週に2回のハウスキーピングまで。
優遇され過ぎていて、自分の立場を忘れそうになる。
「なにか、わからないコトある?」
部屋の中に視線を巡らせる僕に、駒野は首を傾げる。
「あ、いや……」
―― ピッピピ、ピッピピ
駒野がしている腕時計からアラーム音が鳴った。
音に反応した駒野は、アラームを止め、ポケットを探る。
PTPシートを取り出す駒野に、僕は首を傾げた。
「薬?」
体調が悪いのかと懸念する僕に、駒野はシートを見やりながら、あぁ、と小さく声を放つ。
「治験中なんだよね」
錠剤を2錠ほど押し出した駒野は、そのまま口の中へと放った。
「治験?」
僕の疑問に、駒野は唾液で小さな錠剤を飲み込み、言葉を繋ぐ。
「そ。オレの仕事は、開発中の薬を実際に服薬して、効能とか副作用とか調べるコトなんだ。今は、精子を殺す薬の治験中」
駒野は、半分ほどまで減っているPTPシートを顔の横で振って見せる。
「怖くないの?」
きゅっと眉間に皺を寄せる僕に、駒野はきょとんとした瞳を見せた。
「治験段階の薬なんて、身体にどんな影響が出るかわからないでしょ?」
怪訝な顔をする僕を、駒野は笑顔と共に一蹴した。
「帝斗さんが作った薬で、何かあるなんてありえないよ。13歳で【魅惑の香水】を調合しちゃうような奇才だよ? ま、帝斗さんの作った薬で死んじゃうなら、本望だけど」
PTPシートに瞳を落とした駒野の唇は、三日月を描く。
再び腕時計へと視線を向けた駒野は、すっと腰を上げた。
「そろそろかな。帝斗さんに呼ばれてるんだ」
部屋の扉へと足を向ける駒野を視線で見送る。
扉の前で振り返った駒野が、不思議そうな顔をし、ははっと小さく笑い声を立てた。
「呼ばれてるのオレじゃないよ。霙さんだよ」
舞い戻った駒野に差し出された手に、腰を上げさせられた。
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