アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
主が変わっただけ
-
カシャンと音を立て、僕の足首にあった黒色のアンクレットが外されていた。
「お前を、あいつらと十把一絡げにするつもりはない」
言葉にきゅっと眉根を寄せる僕に、帝斗はゆったりと腰を上げた。
「お前の命は俺のものだ。暗城から買い取った。要らないなら、俺にくれって言っただろ」
呆れるように放たれる声に、僕は言葉を失う。
本気、だったの?
なんで僕にそんな恩情をかけるのかが、わからない。
外れたアンクレットに、動揺が心を走っていた。
どさりと、机1つ分向こうにあるソファーに座った帝斗は言葉を繋ぐ。
「お前の抑制剤を作る。…前回の発情期、いつだ?」
ちらりと僕に瞳を向けた帝斗は、斜めに座り、長い足を優雅に組む。
「…1ヶ月前」
帝斗の質問に素直に答えながらも、胸に蟠る思いが口を衝く。
「……今からでも遅くないでしょ。僕の買い取りなんてキャンセル…」
「キャンセルなんてしない」
言葉に被せるように放たれた帝斗の声は、僕の思いを、なんの迷いもなく切り捨てる。
苛立たしげに見詰める瞳にも、僕は口を噤がない。
「なんで僕なんて買い取ったの? 僕に、そんな価値はない。僕に合う抑制剤を作ったって、帝斗に利益があるなんて思えない」
くっと眉間に皺を寄せながら紡ぐ僕の言葉に、帝斗は溜め息に似た空気を吐いた。
「利益のために、お前を買った訳じゃない」
何を言っても、帝斗は僕を暗城家に戻してくれそうもない。
……結局は、主が暗城家から黒羽家に変わっただけ。
分不相応な待遇を受けている気はしなくはないが。
僕は無意識のうちに、帝斗に気に入られてしまったのだろう。
黒羽家では帝斗に気に入られれば、そういう扱いになるのだろうと、自分を納得させた。
僕は、消えられないコトへの諦めの気持ちと共に、アンクレットの外れた足を差し出した。
「なんのつもりだ?」
帝斗に向けて足を伸ばす僕に、帝斗は顔を顰めた。
「僕は黒羽家の所有になったんでしょ? アンクレット、つけるんでしょ?」
投げ遣りな僕の言葉を、帝斗は一蹴する。
「黒羽家の所有になった訳じゃない。俺がもらった命だ。どうしようと俺の勝手だ」
鼻で笑うように吐き捨てられた帝斗の言葉は続く。
「逃げたいなら逃げたって構わない。ここにいる分には、衣食住は賄ってやる。薬もな」
ふっと細くなる帝斗の瞳は、まるで笑んでいるかのようだ。
その表情はマスクで半分が隠れてはいるが、余裕しかない支配者の顔。
「あぁ。タダで…俺に養われるのは嫌だと言うなら、抑制剤の治験員として、ここに居れば良い」
理由はなんとでもなるとでと言いたげに、帝斗は言葉を吐いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 116