アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
熱に飲まれる
-
なんで、そこまでして、僕を生かそうとするのか。
僕の身体が切り売りされようが、その辺でのたれ死のうが、帝斗になんの不利益もないのに。
「……なんで? 僕は生きている価値なんてないのに」
力尽きたように地面に落ちる僕の足。
嘆くように呟いた僕は、生きていたくないと訴えた。
ふぅっと小さく息を吐いた帝斗が、腰を上げた。
ゆるりと近づいた帝斗の右手が、僕のこめかみに触れる。
すっと差し込まれた手が、僕の短い髪を後ろへと流した。
じっと見詰める帝斗の瞳に、僕はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。
口許のマスクを摘まんだ帝斗の手。
するりと下げられたマスクに、形の良い帝斗の唇が覗く。
―― ちゅくっ
僕の下唇が、食まれた……。
どくんっ。
大きくひとつ、僕の心臓が暴れた。
沸騰した血液が、瞬間的に、身体中を巡った。
ばくばくと心臓が、けたたましく鳴り響く。
ぞわぞわとする感覚が、背中や腰を撫で擦る。
上手く息が、継げなくなる。
「ぁっ……ぅ、……」
小さく短く必死に空気を取り込もうとする僕に、マスクを戻した帝斗は、眉間に深く皺を刻んだ。
身体が目の前のオスを欲した。
熱に頭が眩む。
僕から離れた帝斗は、慌てる様子もなく机の上に無造作に置かれていた薬瓶を手にする。
手の上に転がした錠剤を摘まみ、僕の口の端に押しつけた。
「ふっ……」
空気を取り込むために微かに開く隙間から、口の中へと捩じ込まれる。
唇に触れる革の感触。
その指先に、舌を滑らせた。
薬を捩じ込んだ指先が離れ、銀糸がたらりと滴った。
「飲め。妃羅も…、俺の妹も飲んでいた薬だ。問題ない」
離れた指先が、僕の顎を持ち上げ、口を閉じさせた。
「近いうちに、お前に合うものを用意する。今はそれで我慢しろ」
口の中に溜まる唾液に苦しくなり、無理矢理に錠剤を胃に落とし込んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 116