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今さらの思いは、すべて遅い <Side帝斗
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煩い口を塞ぐために、キスをした。
本能に飲み込まれてしまわないように、呼吸を止め、マスクをずらしてキスを見舞った。
信じられないものでも見たように瞳を大きく開いた霙の呼吸が乱れ始めた。
予想だにしない[運命の番]からのキスに、Ωの本能が急激に頭角を表した。
溢れ出した本能が、繁殖のための反応を示す。
急激に上がった血流と驚きによる過呼吸に、霙は苦し気に胸を押さえた。
俺を見詰める瞳は潤み、赤く彩られた目許が色香を放つ。
ずくんっと股間に直撃するような感覚に、身体が痺れた。
このまま霙の身体を暴いてしまいたいと本能が叫ぶ。
ぐっと奥歯を噛み締め、暴れ狂う欲望を理性で捩じ伏せる。
先に飲んでおいた“鎮静剤”も効果を発揮する。
それでも尚、俺の頸は激しく痺れた。
……その口を、言葉を止めたかったなんて口実だ。
触れたくて、口づけたくて、堪らなかったんだ。
瞬間的に、本能が理性を飲み込み、口づけていた。
理性を引き戻すように、焦りながらもマスクをし、机に向かった。
妃羅のために開発した抑制剤を手にする。
俺のスラックスを握り締めながら、番にするのかと問う霙。
その手は、大嫌いなα…俺に縋る自分への嫌悪に震える。
「運命の相手だからと、無理をして俺を好きになる必要はない」
母を奪ったαを嫌悪したいのに、本能は目の前の存在を求めて揺れる。
無理矢理に運命に従う義理はない。
信条を曲げ、俺を愛する理はない。
俺など、霙に愛される資格は…、ない。
「こんな僕が運命だなんて…、最悪だね」
霙は、自分は薄汚れていると蔑んだ。
たくさんの男たちと身体を重ねてきた…欲情に平伏してきた自分を卑下ているのだと思った。
そんなのは、Ωの血に翻弄されただけだ。
そこに霙の意思は介入していない。
好きで身体を重ねてきた訳じゃない。
「俺がどう思うか……。お前の善し悪しを決めるのはお前じゃない」
そして、俺の善し悪しを決めるのも、俺じゃない。
霙の運命の相手である俺は、何人もを貶めて、葬ってきた穢い人間だ。
俺の生き様は、自分の意思だ。
汚れることを厭わす、気の赴くままに生きてきただけだ。
俺の本性を知れば、お前の方が、最悪だと嘆くコトになる。
今さら後悔したって。
今さら懺悔したって。
すべては後の祭りだ……。
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