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疑惑の運命 <Side霙
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専務室のソファーで少しだけ休み、自室へと戻った。
僕の手には、茶色いガラスの薬瓶。
無理矢理に口に押し込められた抑制剤を、部屋を出る前に持たされていた。
飲まされた抑制剤は、良く効いた。
数分も経たずに、僕の身体の熱は引いた。
この薬でも僕には十分だ。
それでも、帝斗は僕に合う薬を調合すると言う。
『運命の相手だからと、無理をして俺を好きになる必要はない』
帝斗の放った言葉が、心の中で反芻される。
本当に僕と帝斗は[運命の番]なの?
αは、Ωのフェロモンに逆らえない。
さらに、[運命の番]となれば、簡単に理性など手放し、本能の赴くままに動くものだ。
なのに。
僕が発情の兆しを見せても、帝斗は落ち着き払っていた。
あの姿は、僕には理解できない。
僕の発情だって。
確かに、発情期は、1ヶ月前だ。
通常のサイクルで考えれば、あと2ヶ月は激しい発情に見舞われるコトなど有り得ない。
帝斗のキスに触発されたのは確かだろう。
でも。
初めて会った独り身のαに、Ωの血が触発されただけなんじゃないのか。
発情してしまった自分に、心が勘違いしたのかもしれない。
目の前のαに恋をし、心を奪われたのだ、と。
僕が恋したのは翠之で。
僕は翠之の為に、居なくなるコトを決めたんだ。
急に現れた素性も知れないαに心を奪われるなど、僕はそんな軽薄な人間じゃない…はず、……なんだ。
予期せぬ発情から1週間。
―― コンコンッ
部屋に響くノック音の後、すっと扉が開かれた。
隙間から顔を見せたのは、駒野だ。
いつも食事を誘いに来る駒野は、僕の返答を待たずに扉を開けるようになっていた。
駒野の姿に、壁に掛けられている時計に視線を向けるが、朝とも昼ともつかない10時半を指し示していた。
「ご飯の誘いじゃないよ。預かり物を届けに来たんだ」
部屋に入った駒野は手にしている透明のガラス瓶を振って見せた。
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