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霙の調査報告書 <Side帝斗
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駒野に霙のために作った抑制剤を届けさせた。
一段落した作業に、専務室の椅子に身体を埋める。
―― コンッ
小さなノック音の直ぐあとに、扉が開く。
ひょこっと顔を覗かせたのは妃羅だ。
「どうした?」
だらしなく椅子に預けていた身体を起こし、声を掛ける。
ゆったりと近づいてきた妃羅は、手許に抱えていた書類の束から1通の封書を抜き出した。
「これ、艶ちゃんから預かってきたんだけど」
不思議そうに首を傾げながら差し出された封書に、俺も訝しげに眉を寄せる。
艶には、データ整理などの仕事を頼んではいるが、大体がデジタル媒体だ。
紙の封書を寄越すなど、滅多にない。
渡されたのは茶色いA4サイズの封筒だった。
封はされておらず、折り畳まれただけの蓋を開ける。
数枚の白い用紙が、クリッピングされていた。
するりと引き出した紙束の一番上には、『白糸 霙 調査報告書』の文字。
俺は、頼んでいない。
眉根を寄せたままに、さらに引き出せば、付箋が貼りつけられていた。
《あんたが執着するとか気になったから調べちゃった》
さらりと書かれた艶の文字に、俺の眉間の皺は深くなる。
執着?
「ぁ…」
封筒の中身が気になっていたらしい妃羅が、俺の横からそれを覗き込み、声を上げた。
瞳を向ければ、困り顔の笑みを見せる。
「兄さんが暗城さんから買い取るなんて珍しくて。艶ちゃんに話しちゃった」
てへっと、お道化たように舌を出す妃羅は、まったく悪びれた様子はない。
会社の経理にも絡んでいる妃羅は、壊してもいない無傷の人形を、大金と【防散スカーフ】で買い取ったコトに、興味を持ったらしかった。
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