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βは理性の生き物
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居たたまれなさそうに、顔を歪める霙に、オレは視線を背けた。
「いや。謝るのは、オレの方…だよね」
申し訳なさすぎて、霙の顔を見ていられなかった。
βは、理性の生き物だ。
優れた才を持つα、繁殖の本能に支配されるΩ。
特別な2つの性には並べないありふれたβは、理性的な生体のはずなのに。
「薬、取ってもらってもいい?」
声を引っ張られるように瞳を向けた。
言葉に詰まるオレに、霙は困り顔の笑顔を見せる。
動けないほど疲弊しているわけではなさそうだが、霙はオレに甘えた。
オレは帝斗から預かった薬瓶に手を伸ばす。
「これ、抑制剤なんだ。素直に…、直ぐに飲めばよかった」
渡した薬瓶を見詰めながら、霙は小さく息を吐く。
―― コンッ
部屋の扉が叩かれた。
音に反応したオレは、霙を制し、扉へと足を向けた。
「はい」
小さく扉を開き、外にいる人物を見やる。
「駒野ちゃん、やっぱりこっちに居たのね」
そこに立っていたのは、このフロアを管理している女性だった。
「ん? オレに用事?」
首を傾げるオレに、彼女は手に持っている弁当を差し出した。
「専務からの指示でね、ご飯運べって言われたのよ。あんたの分と、この部屋の…白糸さんって人の分」
弁当を差し出しながら、あんたたちは食堂での飲食は禁止だって…と言葉を足した彼女は、不思議そうに首を捻っていた。
あっと小さく声を零した彼女は言葉を繋ぐ。
「あと、駒野ちゃん、明日、9時に専務室に来いって」
きゅっと眉根を寄せた彼女は、何をしたの? とでも言いたげに、オレを見やる。
「わかった。明日ね、お弁当ありがとう」
オレは彼女の差し出す弁当を受け取り、追求を逃れるように、会話を打ち切り、扉を閉めた。
渡された食事と帝斗からの呼び出しに察した。
オレが霙に手を出してしまったコトが、帝斗にはバレている。
「……“処分”されちゃうのかなぁ」
食事の準備をしながら零れた声に、霙が不思議そうな顔を覗かせた。
「処分?」
声に向けた瞳に、霙の顔が曇る。
「帝斗さんの大事もんに手ぇだしたんだし、この世から消されても文句言えないよ」
たははと力なく笑うオレに、霙は柔らかな笑顔を見せた。
「黙っていればいいよ。君は悪くない。僕が誑かしただけだから……全部、僕のせいにすればいいんだよ」
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